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「乗せてほしいなんて言った覚えないんだけど」

 石畳の上を、かっぽかっぽとひづめの音が景気良く響く。
 立派な体躯の馬は栗毛と青毛の二頭。
 それが引くのは開閉できる幌のついた黒い車体。
 からからと回る車輪。
 その後をものめずらしそうに追いかけてくる子ども達。大人が早足で歩くくらいのスピードしか出していないから、面白がってついてくるんだろう。
 中にはうらやましそうに見てくる観光客もいる。
 五人詰め込まれたこの状況はいただけないんだけどな。
 大体、これ四人乗りだったと思うんだけどなー。
 狭さを忘れることは出来なくても、せめて気晴らししたくて小さな窓から外を見る。
 商店街を抜ければ、のんびりとした原っぱが広がっていて、行く手にはこんもりとした森……にしか見えない島。
 久々に。本当に久々に実家に帰ることになって。
 ま、帰郷の理由……というより目的は、親戚一同へのお披露目なんだけど。
 遊ぶ気満々な梅桃と、同じようにお披露目という名のさらし者にされる楸は相変わらず楽しそうだ。
 楽しくなさそうなのはカクタスか。なんかもう涙目になってるしな。
 あとアポロニウスもあんまり楽しそうではない。
 大体カクタスやアポロニウス、それに楸も上背があるから余計狭いんだ。
「ヒュプヌンリュコスはこの国パラミシア最北の街です。
 人口は約三万人。主な産業は観光業。
 一番の観光名所であるステラマリス城には、かつてこの地を治めていたスノーベル家が今もなお住み続けていることでも有名です」
 そんな俺達にかまわず、にこやかな声が告げる。
「っていうか本人でしょ」
「うん、本人よー。ってそれは楸ちゃんもでしょ」
 馬車の内外での白々しいセリフ。
 別に歩いて帰ったって良かったんだけどな。
 いやむしろ……歩いて帰ると宣言しておいた方が良かったんだろうかと、今更ながらに痛感した。

迎えに来るとはいわれたけれど。(07.10.03up)

「おかげさまで大繁盛」

 いやもう、笑いが止まらないって言えばいいんだろうか。
「はい。……はい。
 そうですね、午後からでしたら。よろしいですか?
 あ、はい、ありがとうございます」
 通話を終了して携帯をポケットに収める。
「大人気ですね、公女」
「まーね。しばらく休んでたから、ちゃんと稼がないと」
 薄に軽く答えて、栗毛の馬のブラッシングを再開する。
 この子が綺麗だと、お客様がまた喜ぶのよね♪
「綺羅星今日も綺麗ねー」
 褒めてやれば嬉しそうに顔をすり寄せてくる。
 どーぶつは素直で可愛いわ、ほんとう。
「それにしても公女。あまり荒稼ぎする必要はないのでは?
 結局アポロニウスの一件で、彼に残されてた遺産の一部貰ったんでしょう?」
「貯金はしておくべきでしょうが。
 それに魔封石の場合、あたしにとっては『使うもの』だもの。
 あと、まだ当分協会本部とかPAとか行かなきゃいけないんだから、貯金は必要すぎるくらいよ」
「にしても、ミーハーな人は多いんですね」
「……それには納得」
 『公爵家の若君御用達』なんてキャッチコピーつけただけでこうも予約数が激増するとは思わなかった。

今回は広告にした方だけど、一歩間違えると自分も広告になる人。(07.10.03up)

お題提供元:[台詞でいろは] http://members.jcom.home.ne.jp/dustbox-t/iroha.html