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描写する100のお題

061:嘆きのうた (73文字)

強く強く風が吹く。すべてを吹き飛ばすように、音を立てて。
髪を服をなびかせ攫うように強く強く。
悔恨の叫びにも似た、音を響かせて。

062:空っぽ (101文字)

大切なものがあった。──温かい家庭、息子。
欲しいものがあった。──才能、子供たちの笑顔。
逃れたいものがあった。──水不足、己への仕打ち。
なくし、奪われ、虚ろとなった心に、【女神】を名乗るものが忍び寄る。

063:まだ (87文字)

できる、やれると頑張ってきた。それでもやっぱり疲れは出てきて。
もう、だめかな。
本当に、「もう」?
いや……
歯を食いしばって立ち上がる。立てる。立てるなら・・・「もう」じゃない。

064:切先 (84文字)

捉えたと思たのに実際は遠く及ばず、ただ空を滑る。
相手との技量の差は承知の上だったが、自惚れていたらしい。
知らなかった。白く光をはじくその存在が、これほど怖いものだとは。

065:伝え方 (84文字)

言葉で、態度で、目で、仕草で。
いろいろとメッセージを発しているつもりなのに、全然気づいてもらえない。
どうしたら気づいてくれるだろう?
どうすれば、わかってもらえるだろう。

066:流れ (78文字)

ゆらゆらと漂い、ふらふらと身を任せる。
読めればいいし引き込むことが出来るならなお良いのだが、あいにく自分にそこまでの力はない。なればこそ、機を伺い爪を研ぐ。

067:不思議な感じ (106文字)

ふわふわゆらゆら落ち着かない。自分の事なのに、誰か他の人の事のよう。
急に人が周りに増えて、一挙手一投足に注目されるようになった。それだけの事を成したのだと分かっているつもりだったけれど。
なんだかとっても、変なの。

068:言えない (84文字)

内緒よ内緒。だって二人だけの秘密だもの。
そう言って隠すのは、驚かせたくて喜ばせたいから。
何でもないよ。気にしないで。
問われても誤魔化すのは、その笑顔を壊したくないから。

069:嘘 (63文字)

相手を陥れるために、己が利益や誤魔化すため。
あるいは誰かを思いやって、自らの心の平安のため。
大小揃え、重ねに重ねることで綻ぶ。

070:かくれんぼ (90文字)

追いかけてきている事は知っていた。捕まるつもりはないわ。
だって気ままな仔猫だもの。行きたいところに行くだけよ。
なのに彼女は追いかけてくる。……捕まりっこないのに。
そう、思っていた。

「描写する100のお題」お題提供元:[追憶の苑] http://farfalle.x0.to/