受け継いだものは
E.なんだか梅桃が怪しい気がする。
探しものなら、確かにコスモスに頼めばいいだろう。
だけど……
どうしてもいやな予感がする。
早く急いだほうがいいような気がひしひしするし、なんとなく妙なのだ。
チームがいつも一緒にいなければいけないわけではないし、ばらばらに行動する時だってあるのだけれど、梅桃だけがいないというのが気にかかる。
いやな予感を感じつつ、梅桃の部屋の扉をたたく。
「ユスラ? いないのか?」
反応は無いが、部屋の中に人の気配はする。
褒められたことじゃないのは分かっているが、返事を待たずにドアをあける。
幸い、鍵はかかっていなかった。
なんとなく静かに一歩、足を進めて。
周囲に漂ってきた魔力に、一気に部屋に向かって走る。
「ユスラ!」
大きな音を立ててドアを開くと、ぽかんとした表情で彼女がこちらを振り向く。
右手は開け放たれた窓の枠に。
振り上げた左手には赤く輝く勾玉。
「捨てるなーッ」
大声で叫んで勾玉を奪い取る。
何とか捨てられる前に確保できたことにほっとして、犯人を見る。
「人のものを捨てようとするな!」
「ちょっと色々調べてたら光りだしたから。危ないかなーって」
「だから捨てるなというにッ」
怒鳴り返してふと気づく。
手の中の勾玉がなんだか妙に熱を持っていて、ついでに光も強くなっている気がする。
まずい気がする。それも、ものすごく。
だから何でこんなときに楽しそうな父さんの顔が思い浮かぶんだッ
半ばやけになりつつ、アポロニウスは簡単な封印を勾玉に施し、梅桃の首根っこをつかんで師匠の元へと急いだ。
師匠こと銀の賢者に調べてもらったところ、この勾玉は内部に魔物を封じており、その魔物の命を削って護符としているものらしい。
本当に、ずいぶんとえげつないものである。
これが息子の身を案じて親が渡すものだろうか?
死んだ人に罪は無いというけれど、悪く言いたくはないのも確かだけれど。
本当にあの親はと思うことは止められなかった。
おしまい。
EDは4種類あります。ちなみにシークレットはありません。
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