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「まともじゃないよ」

 世の中には得てして、答えにくい質問というものがある。
 今回のことも、それだと察して欲しい。
「なーなー、教えるくらいいいじゃんか」
 質問の主は痺れを切らしたのか、こっちを揺さぶりにかかる。
 今は肩をゆすられてるだけだけど、放っておいたらもっとひどいことになるだろう。だけど。
「どうって言われてもな」
 とりあえず言葉を濁しておく。
 だから察しろ、これ以上突っ込むな。
「お前ら女の子と同居してるんだろ?
 どきどきするようなハプニングとかないのかよ?」
「間違いとは言い切れないけど、『家に同居』と『寮で共同生活』ってのは違うと思うぞ。あと、心臓に悪いどきどきなら毎日のように味わってる。
 ……脈拍って一生のうちに決まった回数しか打てないって聞いたことあるけど事実か?
 そうだとしたら俺、あいつらに寿命縮まされてる?」
「おーいシオン、戻って来い」
 なにやらぶつぶつ言い出してしまったシオンの眼前で、ヒースは手をひらひらさせる。
「駄目か。ならカクタスでもいーや。で、どうなんだ?」
 わくわくしつつ尋ねるヒース。思いっきり顔をそらすカクタス。
「おい。何だよその態度は」
 いつもは口数の多いカクタスも話題に乗ってこないことを不思議に思いつつも、再度問いかけるヒース。
 逃れられないことを悟って、カクタスはその一言を搾り出した。

ごく普通の青少年の疑問。多大なるアコガレ。(07.10.17up)

「結局それか」

「あー、もしかして極度の料理ベタとか味オンチとか?」
「そうとも言いがたいっていうか、いっそそうなら諦めがついたって言うか」
 人がどうにか答えたそれに、ヒースはすごく不満そうな顔をした。
 まあ、オレが質問した側だったらそうかもしれない。
 だからって正直に話す気にはなれない。なれないともさ。
 山吹は確かに普通には出来る。出来るけど、たまに妙なものを混ぜる。
 いや、シオンには混ざってるか知らないけどな。
 人体実験するなと声を大にしていくら言っても聞きゃあしない。
 それから橘の作る料理は……やめよう思い出したくない。
 灰色スープやカビ餅ケーキ。
 果ては何故かぼこぼこと泡立つパンなんてオレは知らないッ!!
 結局、シオンに作ってもらうか、自分で作るかした方が安心できるんだよな……
「なんでそんな知りたがるんだよー。もしかして食いたいのか?」
 半ばやけっぱちで言ったセリフにヒースは目をそらす。
 ……そういうことかい。
「じゃあ、今度詰めてきてやるよ。朝のあまりでよければ」
「マジで!?」
「大マジ。ただし苦情は受け付けない」
 大喜びして、ヒースは二つ返事で了承した。
 多分明日、そんな自分を後悔するんだろうなーと思いつつも、オレは翌日それを持ってきた。

話して駄目なら実体験あるのみ。幸せなのはどっち?(07.10.17up)

「駅まで行こうか?」

「えっ?!」
 かえるがつぶれたような声を出したのは、それが本当に似合わない人だった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ 今どこにいらっしゃるんですか?!」
 注目を集めていることは知っているだろう。しかし、銀の名を冠する賢者は、声を潜めることなく、むしろ受話器に向かって怒鳴っている。
「なんか事件かなー?」
「にしては慌て方がヘンだぞ」
 ぽそぽそ会話を交わすのは、書類を提出に来た楸とシオン。
「そっすねぇ。事件とかだったらすぐに冷静になる気がしますっす」
「だよなぁ」
 こくりと頭をかしげる使い魔に、主も同意を示す。
 普段あんまり慌てない人が、一体何に対して慌てているのか?
「……それでよくそこまで来られましたね」
 呆れた声音を聞いて、二人と一羽は想像をめぐらす。
「知人には違いないよな、相手」
「そうだねぇ。仲いい人だと思うよ」
 電話の相手は誰だろうと小声で論議を交わしていると。
「駄目です」
 きっぱりと、一刀の元に切り捨てるような冷たさでもって放たれた言葉に。
『ええええええええッ どーしてーッ?!』
 受話器の向こうから絶叫が応えた。
『いいじゃないッ 久々に会いたいのーッ』
「……お正月には皆さんそろって会えますよ」
『いーやーっ 今会いたいのーッ
 たまにはおねーちゃんのいうこと聞いてくれたっていいじゃない。
 迎えに来てよー』
「姉さま、それは姉が言うセリフなんですか?」
 聞こえてきた――もとい、今も聞こえ続けている声はシオンたちも知っているもの。
 どうやら彼女はそれなりに近くまで来ていて、妹の賢者に会いに来る途中なんだろう。
 ――彼女を一人で出歩かせて良いか?
 否。絶対否。何をしでかすか分からない、隣にいる楸以上に。
 そして、仕方なくシオンは出迎えに行くと挙手したのだった。

厄介な人来襲。(07.10.31up)

「手触り良いね」

 初めて座った椅子は、予想通りクッションが効いてて座り心地が最高だった。
「こーゆーのに座ってたら、事務作業でもあんまり疲れないのかなー?」
 机の上のペンや文鎮も良い物なんだろう。よく使い込まれていて安っぽさがない。
 この机だって、使ってる木はいいものだよねぇ。飴色つるつる。
 なんとなく木肌に手を滑らせて、そのままこてんと頭ものせる。
 ひんやりとして気持ちいい。
 建物全体が図書館になっているせいか、静かな空気がまた心地よい。
 留守番約においてかれたのは少しつまらないが、ここの部屋にいていいというのは少し得をしたと思う。
 だってモノいっぱいあるし。暇つぶしは出来るし。
 壊したり、物の場所を変えたりはしないけれど、備品チェックくらいはいいよね。
 心の中で少しばかり言い訳して、さあ何をいじろうかと部屋中を見渡す楸。
 留守番の選択は、果たして正しかったのだろうか?

よりによってこの子を残すのか。(07.10.31up)

お題提供元:[台詞でいろは] http://members.jcom.home.ne.jp/dustbox-t/iroha.html