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どこをどうすればそうなるんだ

――魍魎(もうりょう)断ちし 黒き剣
雷宿りし 白き御手
そして 敬虔なるは 神の使徒――

 何度聞いても慣れないもんだな、自分たちの賛歌ってのは。
 ため息の代わりに、あたしはカップを傾ける。
 隣でディアナが少々居心地悪そうな顔で食事を続けてるけど、男どもにいたってはいつもと変わらない。
 何でよりによってあたしたちのいるとこで、こんなものを聞かなきゃなんないんだか。
 ディアナたちには悪いけど、正直この歌の中にあたしが出てこなくって良かったと思う。
 歌い手への拍手の後、上機嫌の酔っ払いの一言からそれは始まった。

「なぁなぁ、三英雄ってどんな人たちだと思う?」

 この手の話では結構好き勝手に言われるんだろうなと分かっちゃいたけど、やっぱり気になるものは気になる。
 自然と耳が会話を拾おうとする。
「そうだよなぁ。どんな人だろうな」
「黒の剣士はすっげえ腕が立つんだろうな」
 会話に盛り上がっているのはまだ若い男連中。
 その『黒の剣士』はここにいるんだけどな。
 うわさの本人はどこか面白そうに話題に耳を傾けていた。しばらくは。
「黒って言うからには、きっと緑の黒髪でナイスバディなお姉さまに違いない!」
 発言の直後にラシェが額をテーブルにぶつけた。
 かくいうあたしも一瞬意識が飛んだし、ディアナも固まっている。
「ちょっと待て、何でいきなりそんな具体例に?」
 良い指摘だ。こんな状況でなかったらあたしが聞きたいくらいだその質問は。
 だけど、発言の主――かなり出来上がってるらしい若者は自信満々に言い切る。
「普通に腕の立つ剣士じゃ面白くないだろ?
 露出たくさんで見目麗しく、それでいて強い。最高じゃねぇ?」
「それは……確かに」
 納得するのかよ!
 大声でそう聞きたい、が、聞くわけにもいかない。
 想像するな! ンなラシェなんか見たくねぇッ
 一気に静かになったあたしたちのテーブルに響くのはセキが操る食器の音だけ。
 こいつ、何でこんなに落ち着いていられるんだ?
「じゃあ白の魔導士は? どんなんだ?」
「そーだな。
 すげえ魔法を使うって言ったら、やっぱり威厳ありそうな爺さんっつーのが定説だが。
 俺はあえて別の意見を述べよう」
 やたらえらそうだなお前。っつーか何で爺さんになる?
 自分に話題が移ったことでディアナなんかあからさまに肩震わせたぞ。
「仮面とか良くね?」
「仮面?」
「そ、仲間にもその顔は見せない謎の大魔法使い!
 その仮面の下は如何に!」
 自分に酔ってるらしい男の発言。
 まあこの程度ならいいか。暴言吐いたらどうしてくれようかと思ってたしな。
「なら赤の僧闘士はどんなだ?」
「敬虔なるっつーくらいだから、ディーファの高司祭あたりじゃね?
 まあ、あんま若いと威厳なさそだからおっさんだろ、おっさん」
 ぴくりとセキの眉が動くが反応はそれだけ。
 その後も『三英雄』について好き勝手な感想が述べられる。

 いや本当あたしは思ったね。伝説に残されなくて良かったってさ。

伝説には尾ひれがつきもの。
この具体例はエヴァ様と一緒にカドケウスを封印した、初代の三人の英雄の絵を参考にしました。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/