在るべきところ
本当は、こんなところにいるはずじゃなくて。
地を這うように、各地を転々とすることも。
血に染まるようなことも。
そんなこと、あるわけなくて。
たくさんの人に囲まれて、父王の元で次代を継ぐために勉学に励んでいたはずだ。
蒼穹を駆ける飛獣の群。
目指すは魔に魅入られた皇国。
対抗する一団を率いる赤い法王。
この戦がどう終わろうと、決着はつく。
自身の戦いへの高揚に感化されてか、それとも多数の獲物の存在を感じているのか、剣が鳴いた。
……復讐を遂げた後のことなんか、考えた事もなかった。
知らず、顔に出ていたんだろう。
たまたまこちらを振り返っていたあいつが不思議そうな顔をする。
目立つ白い髪をフードで隠しながら、どうかしたのかと笑いかけてくる。
そいつの向こう、先を歩くのはあの時とは打って変わってラフな姿のセキ。
後ろの俺たちの様子に気づいたか、歩くペースを少し下げて、早く来いとばかりに一瞬視線をくれる。足を速めて追い越せば、半歩ほど後ろをついてくるディアナ。
あの事がなければ、復讐に走ることもなく。
その道がなければ、今こうしていることもない。
次はどこへ行き何をしようか?
旅の厳しさは変わらない。
それでも比べ物にならないほどに、きっと今は……
お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/
ディアナのことと見せかけてラシェ。
ソルトブルグ王が……いえ、サイファーが復讐を企む事がなければ、カドケウスの封印はもっとゆっくり解けて、対策の練りようもあったかもしれない。
そしてごく普通に過ごしていたなら、父王の後継者として存在していたはずのディアナ。
ラシェは、戦が始まるまでは次の王たるべく育てられていたことでしょう。