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こんなところで

「大丈夫。何も怖いことはありません」
 そう言って自分のマントをかぶせ、小さな彼女を抱き上げる。
 マントを頭からかぶせるのは、彼女の視線を遮るため。
「ですから、どうか目を閉じて」
 壁に飛び散った『赤』を見せないために。

 生まれたときから知っていた。
 臣下を代表して王に祝を述べたあの時。
 『滅びの子』
 神官達はそう予言し、時が経つほどに王もディアナ様へと向ける目が変わっていく。

「ウォルター?」
 震える声で、小さな手を伸ばしてくる姫君。
 小さなその身に流れる血の宿業。それに流される事の無いように。
 守ると誓った。この身に代えても。

 静かになると、やはり考え込む事が多くなる。
 窓の外に広がる景色は、故郷と似ても似つかない。
 乾いた大地、乾燥した風。
 それでも人々の声は明るく……故に、破壊の跡が痛々しい。
 もし、あのまま死んでいたら――?
 気持ちを切り替えようと景色に目をやるが、それは叶わない。
 考えずにはいられない。
 大切な事をお伝えできぬままに、死ぬことは出来ない。
 ディアナ様は、もうあの小さな少女ではない。
 それは分かっているけれど、出来るならばまだまだ守りたい。
 思っていても、少しでも動けば傷が傷む。

 アスラン軍がやってきて、ディアナ様は投降することを選ばれた。
 ここで逃げたら、魔物になってしまう気がすると。
 アッティカは、ディアナ様を助けるために乗り込んでいった。
 しかしこの身は、一歩も動く事が出来ない。
 この傷では、旅を続けることは難しい。
 『何も怖いことはありません。ウォルターがついています』
 かつてそう言って慰めていたけれど……
 もう、ついていくことすら出来ない。

短いですが……書きたかったウォルターさん視点!
アベルの村に置き去りにされたときの心境や如何に?
しかし……彼の若いころはすごい男前です。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/