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あの人だけ

 永かった。
 魔族たるこの身にとっては刹那に過ぎない数年が、こんなにも永い。
 だがそれも今日までのこと。
 行く手を遮ろうとする衛兵を視線で黙らせ城へ入った。

 従順な部下の振りをする事は容易い。
 おろかな人間を騙す事もひどく容易い。
 それでも、主以外のものに頭を下げるなど屈辱以外の何者でもなかったが。
 玉座にあまり目を向けないように注意しなければ、この感情を抑えられない。
 この男が……このような人間如きが我らが王を奪った。
 人間と契ったばかりにあの強大な力を失ってしまわれたエヴァ様。
 力を信奉する我ら魔族にとって、それが何を意味するか。
 我らの王を奪い貶めた人間どもを決して赦すものか。

 はるか昔に感じたものと同じ瘴気。
 どれだけ微細なものだろうと気づかぬはずはない。
 かつて奴を封じたのは我らの王。その場に私もいたのだから。
 靴音だけが高く響く。地の底へ続く長い階段。
 『地』は我らの王が治めた場所。故にあの魔神はここに封じられた。
 最下層にたどり着く。
 魔神を封じていようとも清浄なはずの場所から、染み出る瘴気。
 案の定封印がほころびている。
「聞こえるか、カドケウス」
 呼びかけに応えはない。だが構わず問い掛ける。
「未だ覇権を望むか?」
 瘴気がかすかに揺らいだ。当然だと言わんばかりに。
 永き時を封じられてなお屈さぬか。それでこそ魔神といえよう。
 カドケウス。覇権が欲しくば得るがいい。
 私はお前を利用する。報復を果たすために。
 手始めに復活するための『器』を捧げよう。我らの王を奪った大罪人を。

 止められる者はもはやいない。誰の命令も聞くこともない。
 ただ一人。命じる事の出来た我らの王は、もういないのだから。

実は結構書いてみたかったサイファーでお送りします。
応援メッセージもらったらやる気が出てあっという間に書けるあたり、自分でも現金だなと思いますが。
脇役キャラでも結構書いたなぁ。アベルにウォルター、ルシアにサカキ。
他、脇役書くならクロン君や歌姫ベラルダ(笑)でしょーか?
エヴァ様でいつか書けたらなぁ。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/