1. ホーム
  2. お話
  3. PA
  4. 受け継いだものは
PA

受け継いだものは

F.何か起こったのか確認しなければ! 悲鳴のほうに向かう。

 突然聞こえた悲鳴に、アポロニウスは窓から顔を出す。
 さっきの悲鳴はどこから聞こえた。
 視線をさまよわせ、二度目に上がった悲鳴に視線をおろす。
 寮の下のほう、中庭に何か赤い大きな生き物。
 それが炎を吐き、木へと火が移る。
 舌打してアポロニウスは窓から身を躍らせる。
 風の術を使って地面に降り立ったころには、数人の捜査員がそれを取り囲んでいた。
 名前は知らないが、炎の形をした不定形の魔物。
 それがアポロニウスを認めて大きく鳴く。
 何でこんなところに魔物が出るんだ?
 ともあれ、倒しても問題なさそうだと判断して呪を紡ぐ。
「光よ貫け。聖光(レイ)
 アポロニウスの呪文に答え、一条の光が魔物を貫く。
 たったそれだけで炎の魔物は形を失い、火の粉となって消えていった。

 その後、魔物の現れた近くの茂みから色を失った勾玉が見つかった。
 それにより今回の魔物発生の原因が判明した。
 アポロニウスの持っていた勾玉は内部に魔物を封じるもので、封じた魔物の命を削って護符としているものらしい。
 本当に、ずいぶんとえげつないものである。
 何らかの理由で封印が解け、魔物が現れたのだろう、と。
 なんて物を持ってるんだといわんばかりの師匠の視線に必死で弁明、もとい真実を話したアポロニウス。
 本当の犯人が分かったとき、これが息子の身を案じて親が渡すものだろうかと、師弟はそろって大きなため息をついた。

 死んだ人に罪は無いというけれど、悪く言いたくはないのも確かだけれど。
 本当にあの親はと思うことは止められなかった。

 おしまい。

EDは4種類あります。ちなみにシークレットはありません。
人気投票に参加してくださった方々、本当にありがとうございました!