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ラブコメで20題

15.予定と違うけど案外しあわせです

 今日のお昼ご飯はパンだった。いつもより一個多く買った。
 最近、おなか空くものね。部活が終わってから食べればいいよね。
 誰も聞きやしないのにそう言い訳しながら。
 本当は、あげたい人を思い浮かべていたのに。

 剣道部と弓道部は意外と仲がいい。仲がいい――と思う。
「この度もうちの馬鹿が」
「いえいえ。うちのも悪いと」
 そう言って揃ってため息を吐くのは弓道部副部長の荻野と剣道部部長の小西。
 その横で言い争っているのは弓道部部長の日沼渉と剣道部副部長の入山麻由美。
「俺のあんぱん!」
「買ったのは私だっての!」
「だから交換って言ってんだろっ ほれ」
「ジュース一本とじゃ値段が違うでしょ!!」
「くれよー腹減ったー」
「うっさいわね!」
「交換! こーうーかーんー! 昼にたべなかったってことは余ったんだろ?」
「だからって食べないわけじゃないでしょっ」
「入山さまーっ お恵みをーっ」
 ぎゃいぎゃいと騒がしい二人を背に二人は息を吐く。
「渉いい加減にしろ」
「腹減ってんだよー。なーなー入山、そのパンくれ」
「厚かましいわねっ」
「ずうずうしいぞ日沼」
「なんだよ小西、じゃあなんか奢ってくれるのか?」
「どーしてそーゆー話になるんだ? あー、アイスとか?」
「腹にたまんねぇから却下。俺は! がっつりとしたのが食べたいの!」
「「帰れ」」
 家に帰っておやつでも何でも食えという二人に日沼はぶーたれる。
「しょーがないわね……あげるわよ。あげればいいんでしょ」
「入山様っ」
 差し出されたあんぱんを両膝を着き両手で恭しく受け取る日沼。
「あんがとなー入山!」
 満面の笑みとともに、ぽいと投げわたされたのは先ほどから彼が手にしていた紙パックのジュース。一応、交換という形にはしたかったのだろう、が。
「ちょっとこんな生暖かいジュースもらっても困るってばっ」
 ばかなんて可愛らしく呟く入山の様子に小西は処置なしといった様子で頭を振る。
「篠宮、潮崎、君嶋」
 それから、一部始終を眺めることになってしまった三人に対して、荻野はビニール袋を差し出す。
 代表で受け取った明日香が中を見ると、紙パックのジュースが三個。
 お詫びか、それとも口止め料か。
 とりあえず一年生三人組はさっさとその場を後にすることにした。

日沼くんと入山さん。 13.1.9

16.想像力と行動力が豊かすぎます

 いつもと変わらない練習前、先生が来るまでののんびりした時間。
 それは、一人の叫びによって大きく壊された。
「ぐぉらぁ剣道部! 山戸に君嶋出て来やがれーっ」
 開けられた扉からずんずんこちらへやってくるのは、弓道着姿の日沼。後ろから慌てたように荻野までやってくる。
「渉!」
「邪魔すんな荻! 今度ばっかりは黙っちゃいられねぇ!
 毎度毎度お前らはうちの部員にちょっかいかけやがってっ」
 どうやら、いつもの面白半分ではなく本気で怒っているようだ。
 体育館中の視線を集めているというのに堂々としている。
「何の御用でしょうか、日沼先輩」
 とりあえず年上の力が答える。
 自分達を日沼が指名するということは、ほぼ明日香についてのことだろうが――ここまで怒られるようなことをしただろうか?
「剣道関連の備品買いに、篠宮つれてったって?」
「いや、その……」
「いい加減にしろ! こっちも部員少ないんだよ団体戦出れなくなるだろうがっ」
「あー」
 思わず呻り、入山を見る力。
 そもそもこの人が熱心に言い出さなければ、この事態はなかったんじゃないだろうかと思うのだが。
 力と同じことを思った人間は他にもいたようで、増えていく視線から引きつった顔をそらせる入山。となりの部員に小突かれているが応じる気はないらしい。
「渉、いい加減にしろ。剣道の道具ってことは西山堂だろう?
 うちの備品だってそこで買ってるだろう」
 呆れたような荻野の言葉に力も頷く。
「はい。明日香ちゃんは足袋を買うからじゃあ一緒に行こうってなっただけで、矢とかも見てましたよ」
 本当のことを話す。まあ鍔とかも見てたけど、あれは居合い刀のものだったし。
 力の言葉に、日沼はぱちりと大きく瞬きして難しそうな顔になる。
「本当か? 付き合うついでに剣道部に引き抜こうって考えてないか君嶋」
「なんでそうなるんですか!」
 あまりの発言に大声で返す大和。
「いやだって」
「何を好き勝手に言ってくれてるのかしらね日沼くん?」
 唐突に割って入った声は、よく通るアルト。
 大声を出しているわけではないのに響くその声は、とても聞き覚えのあるものだった。
「げっ 篠宮!」
「妹のことであることないこと大声で言ってくれて……何がしたいの?」
 にこやかに、しかしかなり怒りを抑えているのだろうことは声から分かる。
「いやだって! うちの子にへんな虫がつくのは」
「あんたがいつ明日香の兄になった?!」
 ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を他所に、剣道部の三年生ははいみんな解散ーと手を叩く。
「放っておいていいんですか?」
「大丈夫大丈夫。日沼は由希乃に口で勝てないから」
「麻由美じゃあ言い合いになるだけだもんね。ってか麻由美、あんたも篠宮に叱られるかもよ」
「どうしてよ!?」
「いや、どう考えても事の発端はあんたが明日香ちゃんを勧誘しまくったからでしょ」
「あう」
「大丈夫だって、日沼と篠宮そーいうのじゃないし」
「だってぇ」
 一連を見ていた咲那は思う。
 入山先輩は日沼先輩を……は知ってるけど、そもそも明日香を口実に使う必要ないのに。

日沼君と由希乃さん。 13.1.16

「ラブコメで20題」お題提供元: [確かに恋だった]