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託された伝言

 長い長い手紙を読み終えて、アポロニウスは息を吐いた。
 緊張させすぎないためか、淡い色合いで整えられた室内に他に人はなく、ちょっとやそっとでは聞きとがめられないだろう。
 開け放たれた窓からは、どこかから風に乗ってささやかな音が届けられる。
 しんと静まり返っていれば、ますます落ち込んだだろうことを考えて、小さなことだけれど感謝した。
 そのくらい、手紙の内容に打ちのめされた、と言ってもいい。
 ちょっと前に師匠である白銀の賢者からいろんなものをもらった。
 曰く、預かり物だそうで何が入っているのかと思いきや、アポロニウスの今は亡き家族からの手紙その他だった。
 心身ともに回復するのを待って渡してくれた気遣いに感謝する。
 何度も何度も書き直した跡のある母からの手紙は考え考え書いたことが伺えるし、口を開けば皮肉全開の父も、文章だと毒も少なくかえって辛い。
 考えれば考えるほど沈んでいきそうになる。
 自然と俯く形になって視線が落ちた。
 木目のフローリングはこの前ワックスをかけたばかりでつややかに人工の光を跳ね返している。そこに、紙が一枚あった。
 拾い上げてみれば、先ほどまで読んでいた手紙と同じくらい傷んでいる。
 零れ落ちてしまったものだろうかと目を走らせてみれば、そこに書かれていたのは何とも短い文章だった。
『ベルがすっごく怒ってたから覚悟してなよ』
 生きていることを確信しているような弟からのメッセージ。
『長生きして怒られなさい』
 そっけないこちらには従妹の名が添えてある。
 おもわず懐かしさに笑みが漏れた。
 彼らの言うベル――スノーベルだって、もうこの世にはいないけれど。
 近いうちにまた墓参りにでも行こうかな、と、今度は落ち込むことなく思えた。

時を越えて伝えられた言葉は、嬉しくもあり寂しくもあり。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/