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世の中なんてそんなもの

 最近、やたらと視線を集めることが多いです。
 そのようなことを上司に言えば、とても不思議そうな顔をされた。

「え、そうか?」
「いやいやいやそうだって! 絶対!」
 熱弁をふるうカクタスに対し、シオンは心当たりがないようで、しきりにはてなマークを頭に浮かべている。
 仲間を求めて視線を横にやれば、どこか心当たり有りそうなアポロニウスと楸の姿。
「ほら! あっちの二人はそう思ってるって!」
「え、そうなのか?」
 本気でびっくりした様子のシオンにアポロニウスが苦笑気味に返す。
「本部内で視線を集めているなら、私のせいだろうな」
「ああ、姫の弟子だから」
「アポロニウス君の髪、派手だしねー」
 言われてみれば、確かにアポロニウスは経歴も見た目も派手だ。
 真っ赤な髪は染めても無理だろうというほどに鮮やかで、人ごみの中でも見つけやすい。
 事情を知っていればなおのこと視線を集めるだろう。
 だが。
「いやアポロニウスじゃなくて……オレが妙に見られてる」
 カクタスがそう訴えれば、三人にそろって首を傾げる。
「あ! 自意識過剰とか思ってるんだろ?! 違うからな、おもいっきりじっと見られてるんだからな」
「それって睨まれてるとかじゃないの?」
 楸の言葉に、先ほどまでの勢いはどこへやら、ピタッと動きを止めるカクタス。
「なんだかんだで、うちってやること派手だし大きくなるし」
「誰がしてるんだ誰が」
「あんまり後ろ盾のないかーくん相手なら睨めるっていう」
「怖いこと言うなああっ オレ被害者じゃん!?」
「というか、その方向なら妬まれてるんじゃないか?」
 アポロニウスの言葉に、またもやピタッと動きを止めて、カクタスは先ほどの三人宜しく首をかしげる。
「妬まれる?」
「師匠の弟子だからということで色々……色々あるんだが」
 言い直した彼に、誰もつっこみはいれない。藪はつつかない方がいいのだ。
「おまえから賢者様に融通してくれ、ということは多々ある。
 そういう意味なら、シオンはいい標的だ。身内が高名な魔導師だらけだろう?」
「あー」
 よくわかるといった様子で頷く従姉弟たち。
「ぜひおじい様に、とかってよく言われたなー。最近ないけど」
「そりゃあ、しーちゃんだって今一応中間管理職だし」
 シオンへ直接言いにくいということだろう。
 年下が上司、というのは、捜査団で珍しいことではない。
「え、つまりオレって。
 シオンへのコネを作りたい人らに狙われてて、シオンとコネがあることを妬まれてる?」
「たぶん」
「そうだろうねぇ」
「畜生っ ちょっとモテ期来たとかって思ったのにーっ!!」
「……そのポジティブさは羨ましいな」

実はチームメンバーがどっかずれてることに気づいてる人には一番同情されているカクタス。
でも本人がポジティブなので、まあ大丈夫か、で済まされるちょっと不憫な子。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/