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終の朝 夕べの兆し

それは詭弁だよ

 ぶっすりとしたふくれっ面を前に、ガイウスは大仰にため息を吐く。
「今度は額縁を割ったんだって?」
「割ってない。少し欠けただけだ」
 むっすりとしたまま返事をするのは一つ年下の弟。
 今年から寮つきの学校へ入学したガイウスが気がかりだったのは、弟妹達のこと。
 間違っても人当たりがいいと言えない弟とマイペース過ぎる妹、それから少々卑屈すぎる末の妹。上二人が喧嘩して、末妹が泣くなんてことがよくあったが……数カ月で変わるはずもなかったか。
「クレアが大好きな絵だったんだろう? 妹なんだから」
「妹じゃない」
 言葉を遮って反論するルキウス。こちらも相変わらずかと嘆息する。
 末妹――クレアは三年前に家の子になった。つまり養子だ。
「妹じゃなければなんなんだ」
「……家族」
 他に言い様がないといった表情で答えるのは、いつかと同じ言葉。
 クレアのことが好きで、将来結婚したいからというようなかわいらしい理由じゃないことは分かっている。
 クレアの素性をガイウスは知らない。ディアマンティーナは自分が妹にすると言い出した割に、気にしていないようだ。流石に父は知っているだろうが。
「家族で年下の女の子なら妹だろうに」
「違う」
 きっぱりと言い放つ本人は気づいていないだろうが、苦い顔をしている。
「喧嘩はほどほどにしなさい」
 そう告げれば、ぷいとそっぽを向いてそのまま出ていく。
 返事がなかったということは好きにとっていいのだろう。
 クレアが来た時からずっとルキウスはこの調子で妹じゃないと言い張っている。
 けれど、違うと言い張る割には、クレアが兄と呼んでも訂正はしないし止めさせようともしない。
 ちょっとよそよそしさはあるものの、引っ込み思案なクレアを邪険にせず相手をしている。というより、扱い方は実妹よりも優遇している。
 ……ルキウス自身には明確な線引きがあるのかもしれないが。
「どう見ても兄妹、なんだよなぁ」
 ガイウスの呟きに、遠くで鳥が応えるように鳴いた。

違うものは違うんだと訴える弟に、兄は嘆息する。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/