透明な檻の中
全寮制の学校なんてそんなものだと言われてしまえばそれまでだけれど、ここは、とても窮屈だ。
皆、ディアマンティーナの姿を目にすると一歩下がって道を開く。
向けられる視線は、羨望、憧憬、嫉妬などなど。うっとおしいったら。
相変わらずの無表情を装って足を進め、目的の人物を探す。
それもこれも、女が校外に出るには誰か連れが必要などという面倒な規則のせい。
思い描く候補は三人。兄とその悪友と友人。
一番面倒なのが兄で面倒が少ないのが悪友だが、この際捕まえることができれば誰でもいい。
美味しいと評判のお菓子をちょっと食べに行くのに、なんでこんな面倒なのかしら?
こつこつと響く靴音。かすかな囁きと反比例に集中する視線。
ディアマンティーナの姿を認めた学生は、みな一瞬ぎょっとした表情を浮かべて慌てた様子で道をあける。
腫物扱いをされるのは今に始まったことではない。身内が経営している学校なのだから、何かあってはと思うのもわからなくはないし。
立派なご先祖様は誇りではあるが、時々思うものも無きにしも非ず。
いろいろ考えたこともあったが……正直面倒なのだ。そして、ディアマンティーナは面倒臭がりである。答えの出ない――しかもあまり興味のない――ことなど、いつまでも考えていても時間の無駄だ。
貴族である以上、注目を集めるのは当然で、ディアマンティーナとて見られることには慣れている。監視されているも同然のこの場所でも、それを気にしないでいられる程度には。
いつも視線にさらされる。だからこそ、守られることもある。
見張られているととるか掌中の珠と慈しまれているととるかは人それぞれ。
兄は、ここから出たがっている。自分もいずれは出ていくだろう。
けれど、どこにいるとしても楽しまなければ損。
口だけで微笑み、廊下の向こうに見えた人影目がけて駆け出した。
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檻に捕らわれていると知っている。だから、出て行く画策をしてもいいでしょう?