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無かった事にしよう

 どうすればいい?
 そもそもどうしてこんなことに?

「ヨシュアどうかした?」
 そう声をかけてくるのは愛しい少女。
 栗色の長い髪をツインテールにまとめた、はつらつとした魅力に溢れている。
 彼女の名はエステル・ブライト。
 ――女王聖誕祭の夜に別れを告げた、大事な大事な女性。
 だけど今目の前にいる彼女はそんなことなどなかったかのように……昔のように僕に笑いかけてくる。いや、今は心配してるのか。
 だけどそれよりも気になるのが……
「どうしたヨシュア」
 彼の方に視線を向けると彼も不機嫌そうな顔で、でも気遣った声をかけてくる。
「あ、もしかして風邪?
 最近たちの悪いのがはやってるってエリッサ言ってたし」
「体調管理も遊撃士の勤めだぞ」
 心配してくれるエステルは嬉しいけど、どうしても彼の存在が気になる。
 この言葉を言っているのがカシウス・ブライトなら何も問題ない。
 だけど、彼は身の丈もある重剣を背負った赤毛の青年。
 アガット・クロスナー。
 正遊撃士となるための修行の旅の途中で何度か顔を合わせ、協力した遊撃士。
 ぐるっと視線をめぐらせば、やはりここも見慣れた場所。
 カシウスに拾われてエステルと共に過ごしたロレントの町の遊撃士協会。
「なんで、アガットさんがここに?」
 僕の当然のはずの質問に、エステルとアガットさんは困惑の顔を浮かべる。
「おいおいヨシュア。本当にどうしたんだ?」
「アガット兄はロレント所属だし、今までずっと勉強みてもらってたわよ」
 エステルの言葉を理解するべくもう一度反芻する。
 アガットさんがロレント所属?
 ずっと勉強を見てもらっていた?
 というかアガット『兄』?
「エステル……一つずつ聞くけど、僕らはアガットさんに何の勉強を見てもらってたの?」
「遊撃士になるために決まってるでしょ。
 ってどうしようアガット兄。本当にヨシュアが変」
「いいから質問に答えて」
 問答無用で遮って、矢継ぎ早に質問を繰り出す。
「どうしてシェラさんじゃなくてアガットさんに?」
「最初はシェラ姉にしてもらうはずだったけど、面倒な仕事が入ったからって父さんがアガット兄に頼んだんじゃない」
「今日の試験はなしだ。戻るぞエステル」
 会話を断ち切られて問答無用で引っ張られるように連れて行かれる最中も僕は混乱していた。
 これは幻術なのか? それとも……
「父さん大変! ヨシュアが変!!」
「ヨシュアがどうした?」
 ただいまも言わずに玄関の扉を派手に開ける娘に、父カシウスは珍しく真面目な顔で答えた。
 カシウス・ブライトは僕の過去を知っている。
 その言葉は聞き捨てなら無かったのだろう。
 だけどその真面目な表情は僕らの姿を見た瞬間に崩れる。
「おお可愛くない方の息子も一緒だったか」
「誰が息子だオッサン!」
「なんだ、可愛くないといったのが気にいらなかったか?」
「いつ誰があんたの息子になったかって言ってんだ!」
「お前を拾ってこの家に連れてきた瞬間からだ」
「父さんもアガット兄もじゃれてないで!」
 その一連の会話を聞いてなんとなく想像がついてしまった。
 というか、同じ事をされた身だし。
 いやいや問題はそこじゃあなく。

「ヨシュア?」
 はっと目を開く。
 周囲は闇……夜か。星が少しずつ動いているのは僕らが空を移動しているから。
 そして先ほど聞こえた声は。
「ジョゼットか」
 確認するように呼ぶと、少し機嫌を悪くしたみたいだ。
「大分うなされてるみたいだったからさ」
 その言葉に先ほどまでの光景を思い出し……ばっさりとその記憶を捨てる事にする。
 あんなもの。覚えておかない方がいい。

一万HITお礼フリー小説でした。そのときのタイトルは「ありえた夢の話」。
元々こっち用で書いていたものなので。
ヨシュアだけじゃなく、アガットもお持ち帰りされていたら、きっとこんなんだったろうな、と。
父さんに「可愛くない方の息子」と言わせたかったとゆー話です。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/