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3rdSS集

【何でこんなに違うのか】

「とりあえず壊してみる?」
「とりあえずで壊すんやない」
 もう幾度目になるのか、リースの提案を却下するケビン。
 却下するのは当然だ。
 星杯騎士とはいえ……いや、だからこそ、女神に仕える修道女がいちいち破壊を振りまいてどうする?
 おまけに、彼女の行いすべてに於いて「監督責任」というものが彼にはある。
 どうしてリースはこうも力でねじ伏せようとするのか、姉のルフィナは決してそんなことはなかったはずなのに。
 姉妹でも似てるところがあれば違うところもある。
 そんなことは分かりきってはいるが、ため息を漏らさずにいられなかった。

【いつものやりとり】

「とりあえず壊してみる?」
「とりあえずで壊すんやない」
 もう幾度目になるのか、ケビンはリースの提案を却下した。
  提案したリースも却下されることは予想していたので、それ以上は何も言わない。
 ただもしも了承が取れたなら、全力で行動に移すつもりはあったが。
 姉は、考えて考えて最良の方法を選択できる人だった。
 でもケビンは考えて考えすぎて動けなくなってしまうように見えた。
 だから「力ずく」なんて方法を提案してみたのが半分。
 何か別の方法をと考え始めるケビンを黙って待つ。
 ふいに聞こえたため息の理由は、後で追及させてもらおうと決意して。

【いつかのお土産】

「遅い」
 開口一番に言われた言葉にケビンは苦笑する。
 確かに待ち合わせの時間には遅れた。
 けれどそれは「これ」を買ってしまったからで、買った理由は思い出してしまったから。
 一度思い出してしまったことをなかったことにはできずに、わざわざ買いに戻った。故にさらに遅れた。
 だからこれ以上機嫌を損ねる前にと彼は手に持っていた物をリースへと差し出す。
「悪かったて。代わりにいいもんやるから」
「なに? この上に乗ってるの、アイス?」
 手渡されたものが食べ物だと知って途端に目を輝かせる彼女に、その反応はどうかと思いながらも、この手が使えなくなるのは痛いと思いつつケビンは説明した。
「ああ。カステラの一部をくりぬいて、アイスをつめてるんや。
 この辺の名物。食うてみ?」
「つめたくて美味しい」
「ってもう食うたんかい!」
 せめてこっちが薦め終わってから口をつけて欲しいなんていうささやかな願いは聞き取られず、元々小さめのその菓子はあっという間に平らげられた。
「お菓子は美味しかった。でも、遅刻の件は誤魔化されない」
「や。そういう意味でもないんやけどな」
 分かっていたが、やっぱり量が少なかったらしい。
 それでも先程よりは視線から鋭さが抜けているところを見ると、多少は効果があったということか。
「あっちにはこれを揚げたのが売ってるで。
 外はカリカリで、中のアイスは冷たいままでうまいんやて」
 ケビンの言葉にすぐさまリースは立ち上がり、「あっち」と先ほど彼が指差した方向へと向かっていく。
 そんな彼女を呆れたように、それでいて優しい目で見て、ケビンも後を追う。

 アイスを使ってるんやったら日持ちはせんな。
 こっちのは揚げたてやないと美味くないし、駄目やな。
 そうして散々悩んで買ったのは、多少は日持ちしそうなふんわりと甘いカステラ。
 あの日に渡すはずだった――渡すことのできなかった、お土産の一つ。

すっかり忘れていたお礼SSを収納。
零の軌跡で登場したときには叫びそうになりました。