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飛び出た理由

「ケビンさんて、リースさんのお姉さんを追って星杯騎士になったの?」
「エステルちゃん、それ……」
 誰から聞いたのかと問いかけようとして、ケビンは沈黙する。
 自分の過去を知っている人間は、ここには一人しかいない。
「リースから聞いた?」
「そうよ」
 エステルは一旦そこで言葉を切って、半眼で続けた。
「でも、リースさんには黙って行っちゃったって本当?」
 うめき声が漏れたのはケビンだけではなく、エステルの隣にいたヨシュアもだった。
 現在探索組としてパーティ入りしているクローゼの視線も痛い。
 何も言わないだけに、突き刺さるように痛い。
「悪かったとは思ってるんやで」
「ちゃんと謝った?」
「当然や」
 謝ってない。
 タイミングを逃したせいで、その件については謝ってない。
 悪いとは思っていると告げはしたが。
 今更という思いはあるが、蒸し返すと立場がますます悪くなることだけははっきりしているから触れたくないせいもある。
 それにアルテリアにいった理由は……
 姉さんを追いかけていっただけでもない。

「ケビン、リースをよろしくね」
 アルテリアへと旅立つその日、ルフィナはケビンにそういった。
 元々ケビンは『姉』の頼みを断る気なんてない。
 それにリースは『妹』みたいなものだから、二つ返事で頷いた。
「良かった。本当によろしくね、ケビン」
「分かってるって。姉さんは心配性やなぁ」
「だって心配だもの」
 年の離れた妹を残していくのはやはり心残りではあったんだろう。
 頼られて誇らしい気持ちさえした。
 ……続く言葉を聞かなければ。
「もしリースがヘンなもの食べて食あたりとか、あまつさえ食中毒でどうかなったりしたら」
「なんやそれ」
 いくらなんでもそれはないだろうと笑うケビン。
 実際、リースが聞いたら怒るだろう。けれど。
「姉さん怒るからね?」

 あの笑顔を思い出すと今でも身震いする。
「ケビンさん?」
「どうかしたんですか?」
「あ、なんでもないで?」
 不思議そうに問いかけてくる二人に笑い返すケビンの顔色は少し悪かった。

 そして以降。
「そんな怪しいもん食うたらあかん!」
 と絶叫する守護騎士がいたとかいないとか。

年が離れてるから、ルフィナ姉さんはリースが可愛かったろうな、と。
あとは個人的にケビンはいじられやすい気がするので。