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キラッキラ!

 羨ましい。その一言に尽きる。
 周りでは楽しそうな音楽が鳴り響き、笑顔でたくさんの人が通り過ぎていく。
 いわゆる地域貢献の一環で、捜査団も出店を出しているのだが、正直なところ人気はない。
 パンフレットを置いて、活動状況の映像を流して、ちょっとしたミニゲームコーナーがあって、レベルの出店では仕方ないともいえるだろう。
 至極残念なことに、その人気の内で店の受付に任じられたカクタスは深く深く息を吐いた。
「だめっすよカクタスさん。受付がそんなじゃあ、ますますお客さんが来ないっす」
「そう言ってもなー」
 家族連れや友人だろう団体も目立つものの、恋人同士っぽいのの多いこと多いこと。
 いいなー、うらやましいなーと思って何が悪いのやら。
「大体、昨日は遊ばれたんでしょう? ならいいじゃないすか」
 マスターは二日間出ずっぱりですと言われてしまえば、カクタスには反論するすべはない。
 祭りは二日間。五人しかいないアルブムに、事務方は三人一組で担当してねと呑気な説明を受け、結局は責任者たるシオンが両日とも出ることになった。
「今日が本祭だっていうなら、こっち選んだのにー」
「本祭の方がカップル多いってご存知でしょうに。だから今日は楸さんとアポロニウスさんがお休みなんじゃないですか」
 あまりにもなツッコミにがくりと肩を落とすカクタス。
「楸さんは自主的でしたけど、アポロニウスさんも一応空けておいて良かったですよねぇ」
 しみじみと言われてはぐうの音も出ない。
 楸は楽しそうにアルトゥールと外出していったし、アポロニウスはコスモスに火木津られるようにして出て行った。
 後者はともかく、前者はとてもうらやましい。
 だれているのを見つかれば怒られる、もとい項垂れていても仕方ないので顔を上げて、カクタスは道行く人たちを見るともなく眺める。
 鳴り響き続ける祭囃子。楽しそうな顔、きゃあきゃあと甲高い声。
 日が落ち始めて、屋台の明かりやイルミネーションが灯る。
 それはまるで万華鏡のように幻想的で。
「いいなぁ」
 憧れを込めて、いつかそれが掴めるように手を伸ばした。

光って見えるものを手にしたくて。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/