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終の朝 夕べの兆し

平行線のまま

 ディアマンティーナの言動と、起こした結果を見れば、お世辞にも平和を好むとは――ぶっちゃけて言えばかなり好戦的な性格をしていると思われる。
 が、これで彼女、自身から喧嘩を売ることは少ない。
 もっとも、勝てる喧嘩しか買わないうえに、相手から喧嘩を売るように仕向けることもあるため、好戦的じゃないとも言い切れないのだが。
 とはいえ、彼女は防御を専門とした魔導師である。
 この点に関しては異論を唱える者はいない。
 【学院】の腕自慢たちはこぞって彼女に挑戦し、防御を破ることができなかった。
 フェンネルもルキウスも彼女に負けたことはないが、勝ったこともない。
 それはつまり、凌ぎきったという点で彼女の勝ちと言えるのだろう。
 だからこそ、今の状況はかなり分が悪かった。

「いい加減にしろ。わがままばかり言うな」
 ここまで機嫌の悪いルキウスも珍しいとケインは思う。
 知っている。誰も彼も冷静でない。
「わがまま?」
 いや……一人だけ、彼女だけは最初から冷静だった。
「それは違うでしょう兄さん? やらなきゃいけないことと、わたしの望みが重なっただけよ」
 鮮やかなほどの笑みを浮かべるディアマンティーナ。
「選ばれたのは、選択権があるのはわたし。なら、わたしが選ぶのは」
「お前はおとなしく守られていればいい」
 苛立ちと焦りを含んだ兄の言葉に、けれど妹は応えない。
「わたしは守りたいの。わたしが守りたいと思う人たちを」
「ならおとなしくこっちにこい」
 ディアマンティーナが自分たちを守るなら、自分たちも彼女を守るというフェンネル。
 彼の言葉に返る微笑み。とても美しい、拒絶の笑み。
「今から間に合わないでしょう?」
「間に合わせる」
「無駄死になんて」
「させねぇよ」
 淡々と理由を述べる彼女に対し、ルキウスがフェンネルが苛立ったように返す。
 けれど、対案は出てこない。
「そんなの、まっぴら」
 話し合いでどうこうできるなんて最初から思っていなかった。
 だからこそ、彼女のその言葉が止めとなった。

優先順位の違いがでただけのこと。そうと切り捨てるには、あまりにも。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/