うっ、後ろ
ガイドブックに載っていたカフェで午後のひと時。
たまたま通されたのは窓辺の席で、二階だから景色も楽しめる。
お茶とスイーツも合格ライン。贅沢気分を味わえるっていいものね。
これで贅沢かってエドあたりは言いそうだけど。
でも、そんな至福の時間はあっけなく崩れるのが世の常。
少し視線を落として、それで気づいた。
土手で日向ぼっこしている双子の兄に。
ちょっと離れて隣に座っている少女もリラックスしてる。
二人の間に会話はなく、初々しい恋人同士にはどう見ても見えない。
確かにコイビトではないのでしょうけど。
兄弟のこういう面を見たり聞いたりするのはなんだか妙な気分ですけど、にーさまファイトと思わなくもないから、お邪魔虫は退散……といきたいところだけれど。
ため息ひとつ。
視線をもう少し下げる。
そこにはやっぱり見慣れた金髪。
間違いなく、エド。
となればにーさまを見張ってるわけで、『彼女』の品定め中ってとこかしら?
「本当に……何考えているのかしら?」
「こんな姿は見たくないものですね、互いに」
独り言に返事が返ってきてあわてて顔を上げる。
黒髪黒目の桜月人。結構がっしりした感じで、年は同じくらいの真っ白な衣装を着た料理人さん。
「お気に召していただけましたか?」
視線はお皿の上、食べかけのケーキに向いている。
「ええ。とてもおいしいです」
にっこり笑って答えて、相手の返事を待つ。
視線があうと苦笑する料理人さん。
私と同じように視線を窓の外……土手に向けて。
「本当に……何してるんでしょうね」
呆れが色濃い声。
このおにーさんもエドを知ってるのかと思ったけど、どうやら違うみたい。
なぜなら、エドと同じように妙な迫力を持った人がもう一人、土手をのぞいていた。
のほほんとした柔らかな空気の中にいるエディたち。
その後ろで不穏な空気を撒き散らしてるエドたち。
そしてそれを眺める私たち。
なんだかシュール……
とりあえず私は視線をはずして、料理人さんに微笑みかける。
「ポムティーの追加お願いします」
お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/
和む人←ピリピリしてる人←呆れている人で見られている。
がんばってる人たちこそが空回りを繰り返します。