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しんせつ

「星の数ほど、夢があるってね」

「大きくなったら何になりたい?」
 問われた言葉に答えるのはいつも違った職業。
 大工になって、お城を建てるのもいいかもしれない。
 勉強も嫌いじゃないから、寺子屋の師匠もすてがたい。
 それとも商人になって一旗上げてみようか?
 だけど……だけど本当は、とっくに決まってる。
「聞きましたよ、鎮真様。
 まぁた勝手に城下をうろついていらしたんですってね?」
 にこにこ、にこにこと微笑みながらの茜の問いが少し怖い。
「うー、うん。
 ほら、やっぱり自分が治める国のことくらい、知っておかなきゃいけないだろ?」
 わたわたと手を動かしながら応える。
 手を振り回すのが楽で不思議に思った。
 ああそうか、着物の袖が短いからだ。……前みたいに女装してないから。
 鎮真は少し前まで「志津」という名で女の子のふりをしていた。
 父の後を継いだ叔父を欺くため。
 このご時世、叔父と甥は近しい政敵。だが、鎮真は運良く叔父とは対立せずにすんだ。
 何故なら叔父は我が子ではなく、兄の遺児である彼を後継に定めたのだから。
 ……とはいえ、完全に信用は出来ないのだが。
「そんな大口を叩かれるなら、立派なご領主になってくださいましね?」
「分かってるよ。大船に乗ったつもりで安心して」
 胸を叩いて応えると、茜はしぶしぶながらも納得する。
 領主になるのは最初の夢。
 鎮真はまだまだ子どもだから、やりたいことはたくさんある。
 どれだけかなえられるかなんて分からないけど、たくさん持つのはいいことだ。
 そうして、彼は今日も新しい夢を紡ぐ。

やりたいことはたくさんある。どれだけ実現できるか分からないけれど。(07.07.11up)

「平気なの?」

 これをしたい、あれもしたいと色々おっしゃる鎮真様。
 だけれど、本当は気づいていらっしゃるのでしょう。
 本当に叶えたいことはひとつだけ。
 それはどうやっても叶うことなどない……見るだけ、見ることすら許されない夢。
 かなえたいすべての夢と引き換えても、叶うことなどないもの。
 時折、聞いてしまいそうになる。
 本当に鎮真様はそれでよいのですか?
 そんなこと出来はしない。
 だから私は気づかないふりをして、今日も茶化すことしか出来ないのだ。
 でも……もしも、もし叶うことがあるとするならば。
 ふと夢想する。
 あのかわいらしいお二人が一緒に暮らされるとなると……
 お部屋の模様替えとか。
 当然着飾りますよね。となると、どういったお召し物が似合うでしょうか。
 あれもいいけれど、これも捨て難い。
 ああ、分かっていてもつい頬が緩んでしまう。
「茜? 突然笑い出してどうかしたの?」
「いえいえなんでもございません。
 ……ふふふ」
「茜、よだれが……」

ついつい妄想してしまいました。by.茜。(07.07.11up)

お題提供元:[台詞でいろは] http://members.jcom.home.ne.jp/dustbox-t/iroha.html