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空の在り処

こんな始まり方

 それは本当に唐突で、迷惑な話だった。
「結婚」
「は?」
 唐突に現れて、ただ一言。
 しかもしかめっ面で言った言葉が『結婚』?
 なんのことやら分からずに、こちらも顔をしかめて見返すと、にんまり笑って彼女は言った。
「誰がどこでするか、占って?」
 両手をぽんと合わせておねだりのしぐさ。
 頼みの内容をもう一度確認する。
 誰がどこで結婚するかを占え。
 確かに自分は星読みで、未来を占うのは仕事の内で。
 結婚するにはどの時期が良いかを占ったのは一度や二度じゃない。
 だけれど、疑問は有る。
「……自分の婚期じゃなくて?」
 当然のはずの疑問は、何故か胸をはって返された。
「花嫁装束が見たいだけだもの」
「ああ。白無垢ね」
 そういうと賛同したと思われたのか、興奮気味に彼女が口を開いた。
「そうなのよ!
 一生に一度の祝い事だっていうのに、宮中よりも市井の方が張り切ってるわよね!
 はー。素敵よね~」
 立て板に水の如く述べて、ほぅっとため息。
「そーいうものなんだ?」
「そーよ。宮中じゃあ婿入り婚でしょ?
 婿が妻の実家に通うか入るかで、祝い膳を出すわけでも無し。
 露顕(ところあらわし)だって身内でもなきゃ関係ないし」
 何か長々話してるけど。ま、いいや。占おう。
「外国では着飾って親戚縁者にお披露目するんですって」
 集中したいっていうのに話し掛けるなよー。
「白無垢見たいなー」
 あ。結果でた。
「まだ先だとさ」
「あっそー。つまんないの」
 ぷっと口を膨らませてすねる。
 同じ年くらいだろうけど、やけに子どもっぽい。
「指すの神子がいうんなら確かよね。残念」
「ちょっと待った」
 いま、聞き逃せない事をいわれた。
「なんだその指すの神子って」
「え? だってあなた橘 正告(まさつぐ)でしょ。紺のくるくるした髪だし」
「確かに橘 正告だけど」
「ならあってるじゃない。指すの神子『橘 正告』。風の君のお気に入り」
「そんなたいした星読みじゃないっ」
 指差すように全てをあてるなんて、そんなわけないだろーッ?!
 だというのに。目の前の侍女はにっこり微笑んで言い訳を聞き流した。
「そうそう私は能登。昴のおそばに仕えているの。
 橘とは同期みたいだから、これからよろしくねっ」
「人の話聞けよッ」

「みたいな感じでしたねー」
 アハハと笑いつつも、背中は冷たい汗がダクダク。
 それもこれも。
「のととたちばなは、おんなじころにおしごとはじめたの?」
 興味津々と言った感じで見上げてくる小さな子ども。
 宮中内といえど外。ここまで引きずられてきた桂の裾が痛々しい事この上ない。
「そーなんですよー。
 詳しくお話しますから、お部屋に戻りましょーね、姫様」
「おはなししてくれるんだったら、もどります」
 わあいと喜ぶ姿は可愛らしいことこの上ないのだけど……
 ああ。ばたばたと凄い足音が近づいてくる。
 姫様がこんなとこにいるってことは、つまりこの足音の主はあいつな訳で。
「正告! 姫様がっ」
「あ。のとー」
「ひめさまああああっ 良くご無事でーッ!!」
 数十年ぶりの対面のように姫を抱きしめる能登に呆れつつも思う。
 後何回、同じこと繰り返すんだろう、と。

同期三人組のうち、二人の出会い。
遠い未来で能登(カペラ)は本人が望んだように派手な外国式の結婚式を行います。
06年6月のTOP絵だったアレですね(笑)。ちなみに新郎は正告(ミルザム)ではなく片桐利勝(サビク)ですけど。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/