「はいそーですかなんて、言えると思う?」
落石から身を守れたのは、目の前にいる少女の使った……魔法のお陰だろう。
自分は魔法には詳しくないが、これほどの力を発揮するものなのだろうか?
もしや、これが話に聞く。
「その娘……ミュステスか?」
人より優れた力を持つというミュステス。
ならば、この事態にも納得がいくというただそれだけの問い。
私の言葉に少女はびくりと肩をすくませる。
何故このような反応をするのだろう?
「さすが、神に与えられた力だな」
賞賛を込めていった言葉。
なのに、私の視線から少女をかばうように、金髪の傭兵がこちらへ踏み出す。
その後ろからは同じく金髪の少女――傭兵の娘だろうか――が、こちらを睨んでいる。
二対の瞳が、強く何かを訴えている気がした。
「人間だから」
轟音が消えて、静寂が訪れる。
それにほっとするような空気が流れたのは一瞬。
「その娘……ミュステスか?」
問われた声に周囲の空気は凍りつく。
びくんと肩を揺らすポーラ。
否と言えるはずはない。
人にあらざる力を持つもの(ミュステス)。
こちらに向かって斜面を転げ落ちてきた大岩。
よける暇などないと、ついというかとっさにというか、使った防御魔法。
これがなければ助かることなど出来なかったろう。
だけど、使ったが故に、今のこの事態を招いている。
答える事も顔を上げることも出来ずに、彼女は沈黙を保ち続けた。
魔力が強いから、人と呼んでもらえないのだろうか。(07.07.04up)
お題提供元:[台詞でいろは] http://members.jcom.home.ne.jp/dustbox-t/iroha.html
虐げられる存在と知っていて、返事なんか出来るか。(07.07.04up)