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まどろみの中

 いつものことながら、あの人は本当に逃げるのがうまい。
 ジルたちはクローゼを頼りにしてくれているが、ジークに手伝ってもらってようやく見つけられる状況だ。
「レクター先輩!」
 さっき見かけたという証言を元に学園の裏手に回る。こっち方面に来たということは、また屋根にいたりするのだろうか?
 そんなクローゼの予想は外れ、植え込みに隠れるようにして靴が見えた。
 声をかければ逃げられるかもしれない。
 そっと近づいてみれば、木の根元に寄りかかるようにして目を閉じている探し人――レクターがいた。
「レクター先輩」
 呼びかけに彼はこたえない。
 まさか、本当に眠っているのだろうか?
「先輩?」
 近寄ってみても返事はない。
 どうしよう、とクローゼは悩む。
 今までこんな風に眠っているときに鉢合わせることはなかったし……いや、寝たふりをしている可能性もある。
「先輩、いい加減にしてください」
 強めに言った言葉にも反応はない。
 本当に、眠っている?
 地面にひざをついて視線を合わせてみるが、レクターは目を閉じたまま。
 さらさらと風にさざめく木の葉の音と、規則的な呼吸だけがしばし場を占める。
 ……どうしよう。まさか眠っているとは思わなかった。
 起こして生徒会室へ連れて行かなければいけないことは分かっているのだけれど……
 気持ちよさそうに眠っている相手を起こすのに罪悪感がわく。
 いえ、仕事から逃げてこんなところで眠っている先輩が悪いんですから。
「レクター先輩、起きてください」
 やっぱり起こそうと改めて声をかけつつ相手を見れば、髪や制服のあちこちに引っかかっている葉っぱが目に入った。
 上の木から落ちて来たにしては量が多すぎる。いったいどこを通ってきたのだろう?
 赤い髪に引っかかっている緑の葉っぱは色合い的にも目立つ。
 さすがに、これをこのままにしておくのは……
「先輩、起きてください」
 声をかけつつ、髪に絡まったままの葉を取る。
 起こさなければいけないのだからむしろ叩いても良いくらいなのに、その手つきはとてもやさしかった。

Twitterお題より。
貴方は見たいと言われなくても『寝ている相手の髪をいじっているレククロ』をかいてみましょう。幸せにしてあげてください。 http://shindanmaker.com/524738

クローゼの髪を編みこみにするレクターも思いついたのだけど、時間軸的に碧っぽいので削除。