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意地っ張りな二人への5題

「あら」
 どちらかというと表情豊かとはいえない妹が不貞腐れていた。
 それも、かなり。
「どうしたのリース?」
「ねえさま」
 不安そうに顔を上げたリースはぽつぽつと話していく。
 内容は分かっていたけれど。
「そう。それはリースも怒るわよね。
 でもケビンだけが悪いかな?」
「……わるくない」
「ふふ、そうね。リースも『ごめんなさい』が言える子だものね」
 少し大きめの声で言ったのは、柱の影で様子を伺っているもう一人にも聞こえるように。
 仲直りしたいのは二人ともなのに、その一言が言いにくいのね。
 どっちが先に謝るかしら。二人同時に謝る――かな?

【01:どちらが先に根負けするか】
仲裁はお手の物だと思うルフィナさん。
けんかをしても、大抵はケビンが先に折れそうなイメージが。

「ケビン、これをあげる」
 手渡されたものをついしみじみと見てしまったのは、渡されたものが信じられなかったから。
 レシピ手帳。
 や、これがどういった物かは分かっとるんやけど。
「なんでオレがこんな物を?」
「ケビンは少し不信心……守護騎士のくせに。
 料理を通じて女神様への信仰を取り戻すべきだと思う」
「いや、それメッチャ理屈おかしいから!」
 ケビンの叫びにもリースは半眼で見返すだけ。
  彼の信心はかなり疑われているようだ。
「それに料理やったら、リースがやればええやろ!?」
「昔から料理はケビンの方が上手かった……
 食材だって、より美味しく調理されたがっているはず」
「いや、でもな」
 悔しがりもせず、逆にどこか嬉しそうに言われては大声で反論できず。
 どう説得したものかと呟くと、急にリースの表情が曇る。
「……だめ?」
 どう声をかけようかと思案しているところに問われて、言葉に詰まるケビン。
 否と言えばリースは引き下がるだろう。
 けれど断れば、また離れてしまう気がする。
 はあ……オレも甘いな。
 苦笑が漏れたのは自分に対して。
 まあ、この程度のワガママをきいてやらないのも狭量だと言い聞かせて口を開く。
「言っておくけどお前もちゃんと手伝えよ?
 あと、作ってる最中でのつまみ食いは許さへんからな」
「分かってる」
 言い聞かせるような言葉にも拘らず、リースは笑った。
 嬉しそうに。……ほっとしたように。

【02:口を閉ざして微笑む】
悶えさせてくれた「隠者の庭園」での一コマ。
久しぶりすぎて距離感がまだ上手くつかめない感じではないかと。

 久しぶりの再会だから、自分も相手も変わっていると思っていた。
 確実に変わっているところはあるのに……
 肝心なところで変わっていないケビンも、いた。
「一つお願いなんやけど……それ、止めへんか?」
「……何のことですか?」
「その丁寧口調や。
 他の連中ならともかく、くすぐったくて仕方ないわ」
 とぼけてみせても、それが当然と言った口調で続けてくる。
「それとグラハム卿いうのも止めてくれ。昔通り呼び捨てでいい」
「お断りします――と言ったら?」
 試すように言ってしまったのがいけなかったのかもしれない。
 答えは分かっていたようなものだから。
「拝み倒す。
 お前が『うん』て言うまで、ひたすら土下座させてもらうわ」
「……やっぱり」
「ま、三つ子の魂百までとも言うからな。
 腐れ縁のノリっちゅうんはそうそう変わらへんってことや」
 案の定返ってきた言葉に呆れて呟けば、予想外の返事。
 なんで。
 今頃、そんなことを言うの?
 先に離れて行ったのは。
「ん、何か言ったか?」
 問いかけられてはっとする。
 聞かれていなくて良かったと思うけど、追求されないように誤魔化さないと。
 昔みたいになんてできない、だから。
「仕方ありませんね。ご命令とあらば――」
「ちゃうちゃう。命令やない、お願いや。
 そこんトコ間違わんといてや」
 ……この男は。

【03:思わず言ってしまいそうになって】
それこそリースは聞きたいことや文句はたくさんあったんじゃないのかなぁと。
少し想像入れてるだけで本編そのままとは情けな……他二次創作でもやってるか自分。

 リースは何か葛藤しているように沈黙を保ったまま。
 ケビンとしても内心は冷や汗ものだ。
 昔みたいに呼んで欲しい。話して欲しい。
 それがどれだけ自分勝手かなんて分かっている。
 無論さっき言った脅しにも近い言葉は本心。
 けれど、本気で拒否されたら――どうしようもない。
 ただただ待つだけ。
 応えが返るまでの時間が酷く永く、恐ろしい。
 睨むようなリースの目に怯えたのは一瞬。
「ケビン。相変わらずワガママ過ぎ」
  不本意だったのかもしれない。
 少し悔しそうにさえ言われた言葉が、とても温かくて、嬉しくて。
「ははっ……そうそう、それやで!」
 一瞬言葉に詰まってしまったことに気づかれてないわけはないだろうけど。
「言っておくけど、言葉遣いを戻しただけ……
 あなたが守護騎士で私が従騎士なのは変わらない」
 続く言葉に醒めていく。
 リースが言っているのは正論。それだけに。
 相変わらずきっついなぁ。
「そこの所、間違わないで」
「うん……そやな」
 先ほど自分が使った台詞をそのまま返されて、頷く。
「昔に戻るなんて……そんなの出来るわけないもんな」
 いくらそれを望んでも。
 いや。
 オレがそんなん望める立場ちゃうやろ……?

【04:哀しそうに笑う、その姿】
ケビンにとってはリースとの再会は嬉しい反面、来るべきときが来たという感じかなと。
単純に好きなシーン集めただけ……精進します。

「リース」
 呆れたような声音は抱きつかれた側の方。
 背中にぺったりと張り付く形で手を伸ばしている。
 その手から遠ざけるようにケビンは皿を……本日の夕食がのっているそれを高く上げる。
「つまみ食いはあかんってゆうとるやろ」
「味見は大事」
 当然のはずの注意にも、それがどうしたといわんばかりの反論。
 しばし沈黙のままに睨み――もとい、じっと見つめ合う。
 思えば、こうしたやり取りは初めてではなくて。
 むしろとても懐かしいもので。
 ほぼ同時に両者の目が和んで苦笑が漏れた。
「しゃあないな。ちょっとだけやで?」
「うん」

【05:少しだけ、そう呟いて抱きついた】
これが限界です(げふっ)。エセ関西弁とリースの性格が難しすぎる。

意地っ張りな二人への5題【 配布元:追憶の苑