青のグラデーション
べたりと落ちた青い絵の具に、思わず声が漏れた。
真っ白な画用紙に落ちた青。
描こうと思っていたのは別のもので、自分の不注意とはいえどうしようと困っていたら、やさしい声がふってきた。
「そのままのばせばいいよ」
ふり仰げば、いつもの柔らかな笑顔をした校長先生。
先生はにっこり笑って視線を合わせ、空を指差す。
「見てごらん。空は上に行くほど青が濃いだろう?」
確かに先生の指さす先――天頂に近い部分は濃い青で、地上に近い山のふちは白に近く、きれいなグラデーションが織りなされていた。
――そんなことを、思い出した。
色鮮やかな緑を抜けて、視界が広がった途端見えたのは、どこまでも広がる青い空。
わかりきってることなのに今でも泣きそうになるのを唇をかんでぐっとこらえる。
「行きましょう」
思ったより固い僕の声に、皆さんが口々に言いながらゆっくりと歩き始める。
ちらと見上げた空はきれいだ。
きれいだけど――辛い。
……帰ることができると知っていれば、素直に楽しめたろうに。
こぶしを握りこんで、青の下を歩き続けた。
お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/
見たことがないくらい綺麗な空。でも、この空は帰りたい場所には繋がっていない。