【第十一話 希望の行方】 9.終りへと向かう
ああ。また会ったな。
おっと忘れられてしまったか? 以前『イクテュース』と名乗ったものだ。
そう。私が出てきたという事は、つまり計画が最終段階に入ったということだ。
計画は順調といえば順調だな。今のところ、だが。
姫君たちは無論のこと、無駄な犠牲も出てはいない。
もっとも『私を使役している者の筋書き』ではまだ人死にが出るだろうが、生憎それは許さぬ。
あるべきものをあるべき場所へ。
私の望みはただそれだけ。
正統な者が『昴』の座に就くこと。人の世に追いやられた姫を本来の場所へ。
そう、だから心情的にはあの三人組と同じモノ。
だが同じ場所にいるわけにはいかなかった。
一度過ちを犯したこの身が、あの姫のおそばにいられるはずもない。
それに、だからこそ出来る事も有る。
「夕闇はいいように賑わっておるよ」
「すでに十分な明かりは有る。新しい提灯は必要あるまい」
「厳しい現実には夢も必要じゃろう」
『私を使役している者』たちは好き勝手な事を言っているな。
まったく……私が本当にお前たちの言うことを聞くと思っているのか。
おっと、思っていることが顔に出すぎていたようだな、叱責された。
しかし『私を使役している者達』の中でもまだ若いあの男は何を考えているのやら。まんまと利用されている事に気づいていないのか。
捨て台詞すら新鮮味がないな。
それを今更いうか?
この身はすでに化生となっている。心に関しては……何とも言いようがないが。
その汚らわしい者を利用している時点でお前達も私と大差ないだろうに。
だが、今は大人しく利用されてやろう。
私にとって都合がいいということもある。
そして、私が蒔いた種を芽吹かせるにも丁度いい。かつて犯した罪がこの件で償えるとは思っていないが、それでもやれる事はする。
事を成し終えたそのときには……大人しく裁きを受けよう。
出来うる事なら、三の姫に裁いていただきたいが。
さて、そろそろ終幕を迎えるとしようか。