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月の行方

【プロローグ】

――凶なる魔神は空を裂き大地を死と闇で包みこむ
彼の暗闇を切り裂くは太陽神(ソール)の加護を受けし勇者――
『アスールの伝承歌より』

 さて、これを伝えたのは誰だろう?
 元々歴史の流れというものは計り知れないものがあるが、こういう伝承は何らかの意図を持って伝えられ始める。
 それは時が経つうちに歪められることがあるかもしれない。
 後世で無茶な解釈をされる事もあれば、意味が分からずただただ伝えられていくだけということもある。例えば、かの『奇跡』のように。
 真実を知るものにとっては、見ていて面白いものだが。

 私は何者か? だと。
 ふむ。確かに気になるだろうが今は明かすわけにはいかない。
 それこそ今まで伝えてきたものが無に帰してしまうからな。
 しかし名乗らぬも非礼。そうだな……仮にイクテュースと呼んでもらおうか。
 ここまで譲歩したのだから後は勘弁して欲しい。
 一つだけ? まったく欲張りだな。
 『我ら』はとある計画を進めている。
 内容? 駄目だ駄目だこれ以上は。
 どこで誰が聞いているかわからんのだからな。
 順調か、だと? なんとも言いがたいな。
 確かに駒は揃いつつある。各地に散らばった同胞も役目を果たしつつある。
 とはいえ我らは未来が見える訳ではなく、どこで『流れ』が来るかも分からない。
 分かっていればとっくの昔に片はつき、あの悲劇も起きなかった。
 もはや退路はない。今度こそやり遂げる。
 そのためにしばし私は表の世から姿を消すとしよう。
 再び見えるのはいつの日になるかな。
 なるべく早く逢えることを祈っているよ。
 それは『我ら』の計画が最終段階に入ったという証なのだからな。