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描写する100のお題

081:囁く声 (81文字)

何を躊躇うことがあるのかと唆し。心にもないことをと嘲り。
本当にそれでいいのかという問いかけ。やってみればいいという肯定。
それらはすべて、自らの内から聞こえてくる。

082:逆説的な考え (100文字)

攻撃に自信があるからって、防御を疎かにするなんて馬鹿みたい。
わたしの魔法がなかったらどうするつもりなのかしら?

攻撃は最大の防御。なにより、防御魔法に割く労力が惜しい。
鉄壁の防御を誇るあいつがいるのに。

083:ひとり (111文字)

わいわいがやがやとした喧噪に包まれて、でも両隣の人たちはそれぞれ別の相手と話をしている。
同じテーブルに座る人たちはけっして知らない相手じゃない、のに。
ただテーブルの上にある食事を黙々と咀嚼する。むなしさも一緒に飲み込んで。

084:誘惑に攫われ (116文字)

最初のきっかけは小さなものだった。大人達が楽しそうにおいしそうにしていたから興味を持って、始めた。
やめようやめようと決意するものの、気がつけば手にしている。負けまいと踏ん張ろうと必死に抗うが……九度目の禁煙も、結局失敗してしまった。

085:足掻くこと (70文字)

諦めないこと、追い求めること。たとえ他人からどう思われようと、どう見られようとも。
なりふりなんてかまってられない。全力でもって突破してやる!

086:棘 (119文字)

バラはなぜ茨をまとうのだろう? 見かけに魅せられて、迂闊に手を伸ばせば怪我をする。
この程度の痛みで手を離すような奴に触れさせないといった意思表示だろうか。
逃げるように走り去っていく男の向こうに、見慣れた姿を……バラのような娘を見て思った。

087:只今掃除中 (81文字)

大事な写真はこのフォルダに。
このテキストファイルは何だっけ? ああ、あれか。じゃあ別名保存っと。
ハードディスクもだいぶ空き容量減ってきたなー。焼いて保存しよーか。

088:なけなしの想い (121文字)

あっけにとられる様子もなく、戸惑うことも驚く様子も全くみせず。
「ああそう」予想通りといった口調で返された。
こっちは勇気を振り絞って告げた言葉にそれはないんじゃないだろうか?
見透かされたことが悔しくて、でもこれ以上どうしようもなくて悶々とする。

089:泣かないで (128文字)

ぱっちりとした瞳が二、三度瞬きする。気をそらす為にいくつか発した言葉は意味をなさなかったようだ。
次第に潤んでくる様子を見て取って、さらに言葉を重ねるけれど、くしゃりと顔が歪んだ時点でこちらの敗北は決定。
頭を撫でて宥めながら、祈るように呟く。どうか笑ってと。

090:音 (74文字)

さらさらと大地をわたる風。しとしとと天から降り注ぐ雨。人の息づかいやささやき。
瞳を閉じて視覚を閉ざしていても、耳が拾う景色はこんなにも色づいている。

「描写する100のお題」お題提供元:[追憶の苑] http://farfalle.x0.to/