041:馴染み (71文字)
ここに通い続けてどれだけ経ったろう。
店主と客だけれど、かわすのは気軽な挨拶、そして同じ質問。
心地よくなっていく空気。染まったのはどちらだろう。
042:笑顔 (108文字)
口角をあげて、目尻を和ませる。簡単な仕草のはずなのに、うまく出来ない。
他の人とどこか違う。見ると嬉しいような楽しいような気持ちになれるのに。
鏡に映る様子はそう呼ばれてもおかしくない。
否、完璧すぎる故に──仮面のよう。
043:泣くことすら (86文字)
こみ上げるものを飲み込んで、噴出しそうになるものをこらえる人。
唇を噛み締めて、挑むように視線を送る姿。
そんなたくさんの人に囲まれていても心は空ろ。……乾いたままの瞳が憎い。
044:友人 (72文字)
普段、たわいない話をしたり、いざというとき頼りになったり。
自分を映す鏡のようなものとか、つきあっている相手で分かるとか。
なんにせよ、有難い存在。
045:たまご (66文字)
生まれるのを待っているのか、それとも期待されているのか。
まだ始まっていない、磨かれないままの原石。
ひよこになれるのは自分の努力次第。
046:目 (91文字)
まんまるに見開かれたそれは、大きくてこぼれ落ちそうで、本人の動揺具合をよく示している。
すぐにまた細められ、訝しむようなものに変わるのは立ち直った証拠。
確かに、口よりもよっぽど雄弁だ。
047:同僚 (92文字)
毎日顔を合わせる相手。気の合うものもいれば合わない相手ももちろんいる。
他愛無い話だってするけれど、やっぱり学生の頃とは違う連帯感。
負けん気強く張り合って、上司の愚痴を言い合い馴れ合う。
048:言葉よりも何よりも (66文字)
欲しいのは行動。どれだけ想っているか知りたいから、態度で示してほしい。
雄弁なのも行動。どれだけ口先で弄そうとも、行動や結果がすべて。
049:お酒 (99文字)
うまいと言って飲み、まずくなると言って飲み、自分は呑まれないと言いつつ呑まれる。
禁止されていても般若湯だ薬だと言い張り飲んできたという。
そんなに美味しいものなのか、それとも別の理由があるのだろうか。
050:捕縛 (97文字)
縄は基本。投網だって欲しい。時代劇で出てくるようなさすまたでもいい。
絶対に逃がさないためには道具にはこだわるし、手段だって選ばない。
言い訳は聞いてやろうじゃないか。ただし、こちらの実力行使後に。
「描写する100のお題」お題提供元:[追憶の苑] http://farfalle.x0.to/