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描写する100のお題

031:研究 (83文字)

知りたいことがある。確かめたいことがある。
そう「なる」ことは知られていても、そうなる「仕組み」がわかっていない。
それを確かめたい。
できれば、世界で最初に、自らの手で。

032:骨 (53文字)

基ともとれる重要なもの。中心にしてなくてはならないもの。
事象にしても、物にしても。最初に造り、最後に残る。

033:風化 (97文字)

さらさらと薄れていく。
それは形あるもの――かつての遺跡や品物――だったり、形のない記憶のようなものだったり。忘れたくないものが、残っていてほしいものが少しずつ少しずつ、けれど確実に失われていく。

034:くちびる (51文字)

紡ぐのは言の葉。引くのは紅。彩られたそれは人目を惹くほどに麗しい。
だと言うのに、放たれる言葉の鋭い事。

035:疲労 (93文字)

知らぬ間に、塵のように積もり積もって、いまや一歩どころが指一本動かす事さえ億劫になった。
こんな事になる前に手を打てば良かったと思っても後の祭り。
のろのろと手を動かし、栄養ドリンクに頼る。

036:確かなつながり (56文字)

確実だというものが欲しい。例えば、血縁だとか、契約だとか。
それがあれば、不安な事を取り除く事が出来ると思うから。

037:溝 (81文字)

行く手を阻むのはもちろんだけど、長く深く横たわられていてはどうしようもない。
埋めるにも戻すにも、それ相応の時間は必要。
その気になれば、飛び越せるような気がしても。

038:いとこ (65文字)

近いけれど近くない。遠いようで遠くない。不思議な関係。
全く似てないと思うのだけれど、血のつながりは不思議でやっぱりどこか似ている。

039:氷 (68文字)

冷たい冷たい固まり。夏にはいとおしく、冬は忌々しい。
外では季節によって憎らしいけれど、室内は別。
グラスに浮かべて、ささやかな音を楽しむ。

040:わたしはただ (95文字)

こんなはずじゃなかった。こんなことを望んでいたんじゃなかった。
本心だけど、本心のはずなのに、言葉が出ない。
起こしてしまったものが大きすぎるから。
でも……それでも、違う、こんなの。望んでない。

「描写する100のお題」お題提供元:[追憶の苑] http://farfalle.x0.to/