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描写する100のお題

011:鍵 (90文字)

ずっと合うものを探している。

いつなくしてしまったのかわからない。
けれど、箱はここに確かにあって、記憶もおぼろげながらあって。
力任せに壊すことも気が引ける。

だから、今でも探している。

012:赤い花 (75文字)

チューリップ、サルビアそれからポピー。
いろいろあるけれど一番はやっぱりバラ。
この思いに気づいて欲しい願いを込めて、大輪のバラに同色のリボンをかけよう。

013:死に近き (68文字)

風にあおられ、すっかり干からびてしまった葉は、それでも枝についている。
その葉に自らを重ねるもの達が見るのは、執着と解放のどちらだろうか。

014:痛み (94文字)

このくらいなら耐えられるとか、この程度たいしたことないとか。
感じ方も耐えられる強さも人それぞれ違うというのに。
誰かにとっては軽傷でも、他の誰かにとっては致命傷。
そういうことも、あるのだと。

015:遠く離れた (80文字)

近ければ良いというものではないことは、何となくわかる。
けれども距離があって時間がかかる方がより懐かしく、愛しく思うものかもしれない。さながら、故郷を想うように。

016:漆黒 (53文字)

幾重にも塗り重ねることで出される色は夜の闇よりも暗く深い。
飲み込まれそうで怖ろしく、力強さに強く惹かれる。

017:同じ日 (121文字)

雲一つ無い――といえば表現は良いのだが、この季節には少々いただけない。
強い日差しを遮ることができそうなものと言えば遙か遠くに見える入道雲くらい。
この日はよく晴れる。毎年毎年、本当によく晴れる。
たぶん、あの日も――こんな晴れの日だったのだろう。

018:血 (60文字)

絆と呼ぶもの、鎖と呼ぶもの、束縛と厭うもの、つながりと尊ぶもの。
好むと好まざるとに関わらず生涯逃れられぬ、変わらぬもの。

019:きょうだい (109文字)

仲が良いところもあれば、悪いところもある。
すごく文句ばっかり言ってるけれど、口ほどには悪く思ってないことも知っている。
いるから良いことばかりというわけではないと思うけれど、それでも、ひとりっこの自分は時々うらやましい。

020:水 (86文字)

必要不可欠とわかっているけれど、実はよくわからないもの。
どこまでも覗けるようでいて深さは窺い知れず、如何様にも形を変える。
鏡のように自らをも映し出す。あるいは、心ですらも。

「描写する100のお題」お題提供元:[追憶の苑] http://farfalle.x0.to/