1. ホーム
  2. Step4 7お話
  3. 2番目の、ひと
  4. Step4 7
2番目の、ひと

【Step4 誤解と和解】 7.正体の判明

 しばらく待っていると、サイレンを鳴らしてパトカーがやってきました。
 ざわめきの気配はこっちまで否応なしに伝わってきます。
 フェッリ先生が警察を呼んだけど、他の先生だっていますよね? ということは、事情を知らないほかの先生が大騒ぎしてるって事でしょうか?
 近づいてくるざわめきと足音の方角をじっと見ていると、木々の間から人の姿がちらほら見え始めます。
 あ、兄さんがいました。フリッツさんも一緒です。二人の近くで先導をしているのは――え? コンラートさん?
「遅いよコート」
「うるさいっ 急かしたのはお前だろう!」
「まあ、そうですけどねー」
 コンラートさんと先生が掛け合いをしている間にも、兄さんとフリッツさんはてきぱきと指示を出しています。
 多分一緒に来た人たちは警備をする警官さんたちと調査をする鑑識さんでしょうか?
 その後ろからついてきているのは、事情を知らない先生たち。
「何故警察が!」
「要請などしていないぞ!」
 だから出て行けと言いたそうな先生たちの声を遮ったのはフェッリ先生でした。
「ああワタシがしました。薬事法違反の植物なんですよね? サンゴーって」
「フェッリ先生?!」
 飄々としたフェッリ先生に他の先生方はびっくりしたり怒りをあらわにしたり大騒ぎです。
「あなた一人の判断で事を進めたのか?」
 一際きついことを言うのはレンダーノ先生。
「一教師が何を」
「いえいえ。本来の仕事ですよ。ねぇコート?」
 先生から振られたコートさんは嫌そうに、でも神妙にうなずきます。
 でも、本来の仕事ってどういうことでしょう?
「国際魔法犯罪捜査団プルウィウス・アルクス、チーム・カーディナル所属魔導士コンラート・C・パウルミュラー」
「同じくPAのチーム・カーディナル所属魔導士シルヴィオ・フェッリです。
 サンゴー不法栽培の疑いで州警察に捜査協力を依頼しました」
「ぴ……PAだとッ?!」
「本物ですよ。ほら身分証」
 ひらひらと出された身分証に先生方が絶句します。
 僕らだって声も出せません。PAって言ったら、魔導士の中でもエリート中のエリートです! 兄さんは知っているのですが、僕だって小さい頃憧れたことがあります。
「不祥事を他者に知られたくないという気持ちは分からなくもありませんが、我々が出てくるということがどういうことかお分かりでしょう?」
 捜査員だと知ってから聞くと、フェッリ先生の言葉も違ったものに聞こえるから不思議です。
 レンダーノ先生たちはすっごい顔で睨んでたり、不安そうな顔で見返したりしていますけど、詳しい話を聞きますとフリッツさんが別の場所へ連れて行ってしまいました。
「……ご協力を感謝します」
 不服そうに聞こえるのは、僕の気のせいじゃないでしょう。
 兄さん、なんだかすごく嫌そうです。お礼を言わなきゃいけないのは分かっているけれど、出来れば言いたくないような感じです。
「いいえー。ただ、こちらとしても手札を切ってしまったわけですからネ。
 お礼ならこちらにぱぱーっとサインを」
「うちの職員を引き抜こうとしないでください!」
 鑑識さんの一人が嫌そうに言って兄さんとフェッリ先生の間に入ります。
 あれ? なんか……あれ?
「え、兄さん知り合い?」
「ええちょっと前から」
 僕の質問に答えたのはフェッリ先生で、兄さんは嫌そうに眉をしかめるだけです。
「刑事としても有能ですし、まあ魔導士としては鍛えれば何とかなりそうですから鋭意勧誘中です」
「その気はないと、何度も断ったはずだ」
 あれ、どこかで聞いたやり取りです。そう、確か電話で……
 あああああああっ もしかして僕が脅されているととったあの電話とか、植物園でのやり取りとか、相手は本当に先生だったのでしょうか?!
 ただ『脅している』のではなくて『勧誘している』だけで。
 それに確か、警察とPAでは与えられる権利とかPAのほうが上のはず。
 魔法犯罪なんてめったに起こるものじゃありませんけど、起こったら被害が尋常じゃないのか通説ですもん。
「そんな事言わないでくださいな。うちは本気で人手不足なんですから。
 うちにあんまり人が来ないようなら、あなた方の仕事が結果的に増える可能性だってあるんですよ?」
「その可能性は分かっている。が、ここを離れるつもりはない」
「あーじゃあアルトゥールくんはどうでしょう? 将来の就職先に、うち」
「はい?!」
 そこでどうして僕にふるんですか?!
 いえ確かに興味がないといえば嘘になりますけど! 気になりますけどものすごくっ
「シルヴィオいい加減にしろ。探索はお前のほうが得意だろ」
「そうでしたー。お仕事お仕事。
 ああ、事情聴取の方はお任せしますよフォルトナー警部」
「魔法にかかわりがない限り、我々は『協力』しかできないからな」
「存じています。さて、悪いが来てもらおうか子供たち」
「はい」
「……はーい」
「わーったよ」
 そして僕らはパトカーに乗せられて、警察で事情聴取を受けることになりました。