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2番目の、ひと

【Step4 誤解と和解】 5.証人推理

 サキの言うことももっともだと思いましたので、帰ってきた兄さんに今日の出来事を話しました。包み隠さず。
 えっと……そうですね、ちょっとうかつだったかなぁとも思ったんですよ。話してるうちに苛立ってきて、感情的になっちゃったかなとも思いますし……
 ただ、やっぱり兄さんに言うのはまずかったような気がします。
「名誉毀損でいけるか」
「ちょっと兄さん待って!」
 本気で怒ってます! いえ怒るのは当然だろうと思うんですけどもっ
「僕らの憶測で言ってることも多いから! 何もそんないきなり」
「しかしアリバイを聞かれたのは事実だろう? そして火事があったことも。
 そっちは要請があればすぐに調べるぞ」
「えっと……それって校長先生とかの話でしょ?」
 なだめるのには苦労しました。
 そういえば、サキに兄さんの仕事教えていたかどうか怪しいです。
 親から文句が出れば先生の責任を問える、くらいにしか考えていたのかもしれません。
 刑事だって知ってれば……何か、余計知らせろといわれた気がするのは気のせいでしょうか?
 ともあれ。兄さんも一応納得して引き下がってくれたのは良しとします。
 次があったら、多分もう無理でしょうけど。

 翌朝、なんとなく早く起きてしまいましたが、やることがありません。
 結局デートの件は流れてしまいましたしね。暇な休日もそれはそれでいいものですけど。とか思ってたらメールが来ました。
 サキから、暇かと聞かれました。あれ? これってもしかしてお誘いですかね?
 ヒマだと返信してから待つこと少し。お茶に誘われました!
 ……なんか、彼女がいるってこんなにも充実するものなのですね。
 と、数時間前は思っていました。
「アーサー?」
「え? なに?」
「コーヒー嫌いだった?」
「そんなことないよっ」
 いけないいけない。ちょっと現実逃避していました。
 ゆったりとした布張りのソファはすわり心地がよくて、コーヒーも美味しいです。
 ……向かいに座っているのが、サキだけなら良かったんですが。サキの隣で疲れたようにコーヒーを飲んでいるのはフェッリ先生でした。ちなみに僕の隣にはコンラートさんがいます。
 何なんでしょうね、この状況。
「ああ眠い。っと……で、目撃者ですけどね」
「はい?」
 目撃者って何のでしょう?
「目撃者ですよ。昨日、レンダーノ先生が言ってた証人」
「ああ!」
 ……デートのお誘いとか、お茶のお誘いじゃなかったんですね。
 昨日のことで分かったことがあるからの報告だったんですね。
 それはそれで大事だし、聞いておきたいことではあったのですけど、ちょっとなんか……ねぇ?
「三年のヴァルター・マーリン君ですよ。
 でもまあ証人って言っても穴だらけ。供述が二転三転するお粗末なものでしたけどね」
 三年生か、知り合いはいないし名前も知りません。
「その様子だと知人ではなさそうですね」
「はい」
「なら、なんで彼は君の事を知っていたんでしょうねぇ」
「え?」
「先生それどういうこと?」
 サキの問いに、先生はカップをソーサーへ戻してどこか楽しそうに笑いました。
「だって彼はキミを名指ししたんですよ?」
「……え?」
「そうでもなきゃ、いくらなんでもレンダーノ先生とはいえあそこまでしませんよ。
 容姿に特徴がすごくあるわけでもありませんしね」
 確かに、僕は中肉中背ですし、髪色だって赤っぽい茶髪なので少ないとはいえません。
 なにより色の表現と見え方なんて人ぞれぞれですからね。
「でも僕本当に」
「……あたし、知ってるかも」
「え?」
 サキの言葉にみんなの視線が集まります。
「サキ?」
「知ってる……とは?」
「確かね、そんな名前だったと思うんだ」
「ふむ。タチバナくん絡みねぇ」
 にやっと笑わないでほしいです先生。あれなにか方向性が見えてきたのは気のせいでしょうか?
「ちなみにタチバナくん、どういった知人で?」
「多分せんせーの予想通りだよ。告白されたけどフっちゃったの。条件飲めないって言うから」
「あらら、本当に予想通りですね」
「アーサーと付き合うことになった日だったと思う」
 あの人か!
 えええ、もしかして僕あの時見てたことも気づかれてました?
 いやいやそれはないですよね? だってサキが言わない限り知られるわけないですよね?
 ただ、諦め切れなくて探りにいったときに僕のことを知ったっていうのはあるかもしれません。
 納得のいかない理由で自分は振られたのに、別のやつと付き合ってるとでも思われたのでしょうか?
「もしそうだったら、あたしのせい?」
「いえいえ悪いのはマーリン君でしょう。彼、仕舞いには人影は見たけどよく分からないと言っていましたから。もしかすると放火自体彼がやったのかもしれませんし」
「ええええっ」
「ま、あくまで可能性ですけどね?」
 そ……うですよね。いくらなんでもそんなことありませんよね?
 ただお茶に来ただけなのに、なんだかとても疲れました。
 結局その後、お昼もご馳走になって帰ったのですが……忘れていたんですよね。問題はまだ何も終わっていないって事を。