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ナビガトリア

【第二話 彼らの思惑】 4.王位継承権

「で? どうするんだい?」
 おばーちゃんが気のなさそうに聞いてくる。
 馬鹿ばかしいったらありゃしない。
 その表情は如実に語っている。
「どーしよっか」
 あたしも困り顔で問い掛ける。手にした手紙も離せないまま。
「そもそもなんであたしに構うかな?
 確か王子って恋人いたでしょ?」
 そんな記事やニュースを見たような気がする。なんとなく。
「王位が欲しいのかもしれないね」
 疑問の形を取って言うけれど、それ以外にはありえないだろう。
「あたしってそんな高位の王位継承者なの?」
 そんなことも知らないのか、といわないで欲しい。
 もともと家は(まつりごと)には関わらないようにしてきたんだから。
 その理由は色々あるのだが、一番の理由は『めんどくさいから』だそうだ。
 王位をめぐる陰謀や外交などなどそんなうっとーしいことはごめんだっていうのが……
 それでも公爵家であり続けられたっていうのはそれはそれですごい事なんだろうけど。
「舞踏会デビューはしたろう?
 そのとき何をつけていたか忘れたのかい?」
 舞踏会。嫌な言葉だ。そのために苦手なダンスをする羽目になるし……
 デビューしたのは十六の時で、義務でもなきゃあしたくなかったけど。
 それはともかく、その時に着けていたのは……
 確か決まり事になってるアクセサリー以外では、宝珠を抱く竜の紋章のブローチ。
「宝珠の竜って、第五位以内の王位継承者の証、だっけ?」
「正確にいえばお前は第四位だよ」
「よん」
 家は結構高位なんだなぁ……公爵家って家以外にも後二つはあったと思うのだけど……
 でも何であたしにかまうのかはよくわからない。
 女王が高齢になったから、後継ぎ問題が出てくるのは仕方ないんだろうけど。
 第一位はこの招待状にもある王子の姪にあたるサルビア姫。
 御年九歳……もうすぐ十歳。
 本来ならこの姫の母君が継ぐはずだったのだが、出産時に身体を悪くしてそのまま。
 第二位は王子の母君。
 ただ彼女はひどく体が弱いらしいから。
「三位は? 王族?」
 その人に構えばいいのに。王族なら王位を継ぐ覚悟も持ってるだろうし?
「女王が毛嫌いしてるらしいよ」
 つまり、運良く王位につくにはあたししか残ってないってか。
 でも馬鹿にされた話だ。
 王位を継ぎたい、だからあたしを道具にする。
「ものすごく屈辱」
「まったくだよ」
 この家には王家を敬う心が無いのか?とか思うかもしれないけどそれは違う。
 家ほどになるとよっぽどの理由が無い限り爵位を取り上げられることは無い。
 故に昔は無茶をやらかす王家をいさめたりすることも大切な仕事の一つだったという。
 大切に思うからこそ苦言もいう。
 王権はいまや廃れてしまったし、爵位なんてほとんど意味を持たなくなったけど。
「お前の相手はきちんと見定めないと」
 うちにはうちの、守らなければならないものがある。
 果たすべき、勤めがある。
 当主になるシオンを支えて、守り続け、秘め続けていかねばならない。
 少なくとも王子がこれをこなせるとは思えない。
 偏見かもしれないけれど、本人に会っての印象やテレビで言われる性格では『魔法?そんな古臭いもの』といった感じだし?
 使命を肌で感じてるのは一族でも本家くらいのものだろうなぁ。
「うちのことを理解できる人じゃなきゃね」
 そしてなにより、多少なりともあたしの好みに合ってないと。
 『理想の相手』なんてものは望まない。
 でもでも、王子のように全然好みじゃない人っていうのもいやだし。
 ならやはりきっぱりはっきりと断るしかない。
「行く、しかないか」
 求婚はされていないが、そうなる前に釘をさす必要はある。
 そう。マスコミが騒ぎ出す前に!
「そうしかないね」
 苦笑するあたしにおばーちゃんも苦笑で返す。
 気は進まないが仕方ない。
 まぁサルビア姫はかわいいし旅立つ前の記念に会っておくのも悪くない。
 何よりその他もろもろの面倒ごとを解決させるために。
 いざ、パーティ会場へと。

 あいつらにも言っておかないと。