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ラブコメで20題

19.限界になる前に教えてください

 額に置かれた冷たい感触にほっと頬を緩める。
 そこでようやく疑問に思う。
 背中や投げ出した腕に感じる感触は硬い板。
 周りで聞こえる声は、普段の練習のときにも聞くもの。
 いつの間に閉じていたのだろう。目をゆるゆると開けると、心配そうな声がかけられた。
「はるちゃん?」
「あすか?」
 どうしてと思って起き上がろうとするも、抑えられる。
「潮崎?」
「起きたか?!」
 ばたばたと慌しく近寄ってくる足音。
 これはもしかしてと嫌な予感に咲那はぼんやりとした頭で考える。
「はるちゃん倒れたんだよ、覚えてる?」
 ああ、やっぱり。
 明日香の説明によると、一年生の稽古が終わって二年生の互角稽古を正座して見ていたら、急に彼女の肩に咲那が寄りかかってきたらしい。
「どこかぶつけた訳じゃないけど、気分悪いなら悪いって言わなきゃだめだよ」
「そうそう、妹ちゃんの言うとおり。
 潮崎、夜更かしでもして睡眠不足とかじゃないでしょーね?」
「めまいとかない? 大丈夫そう?」
「たぶん……?」
 咲那の自信のない答えに、先輩方の目が険しくなる。
「もう少し休んだら保健室ね」
「そうだな。保健室いっとけよ?」
「心配かけるなよー」
 口々に労られて思わず感動する。おまけに。
「急に倒れたら心配するだろ」
 なんて、力から言われては感動するなというほうが無理だ。
 『後輩』だから心配する。
 そういう意味なんだろうと思うし、分かってはいるけど。
 それでも咲那は嬉しかった。

咲那ちゃんと力くん。 13.2.6

20.あくまでラブコメしませんか

 目を輝かせて展示物に魅入っている彼女は本当に楽しそうで、うかつに声もかけられない。
 時々抑えきれないのか、小さな感嘆の声が上がる。
 綺麗。すごい。格好いい。
 デート。なのだろう、多分。
 男女で一緒に出かけているのだからデートだ。行き先は関係ない。
 博物館っていうのもいいじゃないか。……目的が、日本刀の特別展だろうと。
 熱心に魅入る明日香を横目に、大和は小さく小さく息を吐いた。

 がらんがらんと静かな境内に鈴の音が響く。
 二礼二拍手、そして一礼。
「何お願いした?」
「受験生が願うのなんて一つだろ」
 とりあえず神社を見つければ願をかける。いやもちろん自分で努力はしているけれど。
「篠宮は買い物?」
「そう、お使い頼まれちゃって。気分転換にはいいけどね。荻野君は……塾の帰り?」
「ああ」
 たまたま。本当に偶然神社で会ったとはいえ、受験生が考えることは似てくるらしい。
 そもそも小さい神社とはいえ、地元では学業にご利益があるといわれている場所。
 先輩方も、そのまた先輩も……両親だってここのお世話になっている人は多い。
「受かるといいな」
「ん」

「ん」
 突然出された拳に入山は不思議そうな顔をした。
「何よ」
「おすそわけ?」
 なぜか不思議そうな顔で首をかしげるのは拳を差し出した側の日沼で、入山はますます不振がる。
「なんでそんなに不思議そうなのよ」
「いやあ、俺、随分信用ないみたいで? 親戚からお守りが送られてくるわ送られてくるわ」
 引っ張り出された巾着袋を除いてみれば、確かに色とりどりのお守りがわんさか入っていた。
「さすがに邪魔になるから、おすそ分け?」
「……罰当たっても知らないわよ」
「ばっかだなー入山。罰を当てるのは仏だぞ」
 先ほどまで握り締めていたお守りを押し付けて、日沼はからからと笑う。

 手渡されたそれを由希乃は苦笑しつつ受け取った。
「なにこれ。太らせる気?」
「え、一度に全部食べる気ですか?」
 そんなわけないだろうと力も苦笑する。
 軽い割りにかさばるビニール袋の中身は、言葉遊びの合格祈願をこめたお菓子の数々。
「にしても、たくさんあるのねー」
 スナック菓子にチョコ菓子。普段とはちょっと違うネーミングのパッケージはそれだけでも楽しい。
 わざわざ由希乃にわたすために、これだけの量のお菓子を買ったという事実がくすぐったい。
 左腕にかけているエコバッグには、勉強の合間に食べようと自分で買ってお菓子が入っている。だからそれを変わりに差し出した。
「じゃあこれ、お礼ね」
 赤いパッケージのポッキーは確か力が好きだったもの。
 きょとんとした顔をして見せたものの、力も笑って受け取る。
「ありがとうございます」

 お礼を言って袋から一本取り出す。
 控えめな咲那と違い、他の面々は次々手を伸ばして力からポッキーをもらって――もとい奪っていく。
「一本じゃ足りないなー」
「全部食べるな」
 嫌そうに箱を隠す力に、けちーとか食べさせろーの声が飛ぶ。
 先輩がくれたお菓子先輩がくれたお菓子っ
 ゆっくり味わって食べなきゃもったいない!

みんな。 13.2.13

「ラブコメで20題」お題提供元: [確かに恋だった]