「明日になれば分かるよ」
はたして……この状況は静観すべきだったんだろうか?
抗いきれず、無理やりに受け取らされた杯を手に、アポロニウスは周囲を眺める。
酒も入ってのどんちゃん騒ぎ。
逃げ切れずにこの場に居続けているが、常時警戒態勢なPAで、こんなことをしていていいのだろうか?
良くはないだろう。
だが実際問題として、集中力は長くは持たない。旅の間中気を張るのは難しいことだ。
まぁ、慣れてくればそういったものへの勘は強くなるものだということも、一人旅経験者のアポロニウスには分かっている。
それでも、矢張り目の前の状況には疑問が出る。
「いいのか? 本当に」
「いいのいいの」
「気にしない気にしない」
槐が軽く笑い、同じく彼らと同年代の青年も酒精のせいか朗らかに笑う。
「たまには気晴らししなくっちゃなー」
「しかしな」
外で飲むならいざ知らず、本部内で飲酒はまずいんじゃなかろうか?
顔中にその疑問が出ているアポロニウスの肩をぽんと叩いて、槐は朗らかに告げた。
「今を楽しもう。今を」
「先に行ってるから」
二日酔いではない頭痛に眉根がよる。
分かっていた。分かっていたはずだこの結果は。
だというのにさっさと逃げ出さなかった昨日の自分を呪いたくなる。
もしも酒盛りがバレたら、団長から注意を受けるだろうなーとは思っていた。
しかし、そっちの方が良かったと思うなんて、思いもしなかった。
ため息を吐いて頭を上げれば、閉ざされた扉が見える。
団長室への扉。
先ほど出て行った酒盛り仲間はかなり意気消沈した顔をしていた。
お説教が甘くはないというのが良く分かる、その表情。
いつもしょげてるアポロニウスも、ああなって当然だろうなぁとか思う。
そんなことでもなけりゃやってられない。
お説教時間は一人当たり五分前後。
時間だけ見れば、短いといえるかもしれない。
だが、疲れ具合やなんかは絶対に違う。
また一人、部屋から出てくるものがおり、名を呼ばれるものがいる。
ふと、これから部屋に入る人物と目が合った。
何かを決意したようなその眼差し。
そして、静かに閉ざされる扉。
……この待ち時間がいやだ。
槐が名を呼ばれるまで、あと三人。
そして、突っ走ったその後。(07.11.07up)
お題提供元:[台詞でいろは] http://members.jcom.home.ne.jp/dustbox-t/iroha.html
怒られることはわかっているけど、楽しいからやっちゃえ。(07.11.07up)