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どこかとおくで…

尊き宝珠

 あれっと思った。
 間違って指先を野菜と一緒に切っちゃって、やっちゃったって思ったのに。
 痛くもなくて、血も流れなかった。

 ああ。とうとう私にも。
 『その日』が来たんだと気づいた。

 皆して私に色々と押し付けてくれるんだからと文句を言って、今まで生きてきた。
 氷火理さんも清も、残される方の気持ちなんか全然考えてないんだから。
 でも今こうやって、『残していく側』にたっちゃった私は。
 残される人に何をどういえばいいんだろう?

 悩んでいる間にどんどん体は動かなくなって、あっという間にばれてしまった。
 本当は、自分の口からいうべきだったのになぁ。
「環ちゃん」
 ああ、泣かないで欲しいな。
 桜さんてば綺麗だから、泣き顔見ると本当に申し訳なくなってくる。
「ごめんね桜さん。最後までちゃんとついていけなくて」
 うわ、余計な事いっちゃったかも。
 今にも大泣きされそうだよー。
「ほらほら桜さん。
 『ヒミコサマ』が泣いてたら変に思われるからっ」
「誰もいないから大丈夫よ」
 あ。なんかデジャヴ。
 そういえば、最初に桜さんに会ったときもこんなやりとりしたっけ。
「私は……勾玉かな?」
「なにが?」
 分かっていても問い返す桜さん。
「だって氷火理さんが剣で、清が鏡でしょ?
 なら私は勾玉かなって」
 わかんない?って聞いたら、目をぱちくりさせて桜さんが聞き返した。
「それって三種の神器?」
「そ。草薙の剣に八咫鏡に八尺瓊勾玉。だったよね?」
 悪戯めかして笑う。
「国ならやっぱりそういうの、あった方が良いと思うし。
 名前そのままじゃ無理かもしれないけど」
「環ちゃん」
 分かってる、こんなことしたってどうしようもないって。
 でもどうしても。
「いつかさ。元になった本当の三種の神器のこと知らない子も出てくるよね。
 で、その子達にとっては、ここが本当の故郷になるんだよね」
 あ。なんか凄く眠いかも。
 ごめんね桜さん。ごめんね昴さん。
 私はもう無理みたい。
「環ちゃ」
「帰りたかったなぁ…」
 ぽつんと呟いて、もう目を開く事はなかった。

『と。思ったんだけど、なにこれ?』
 なんか分からないけど見える。
『さあ、僕にも分からないです』
『結局最初から最後まで良いように使われたようだぞ』
 聞こえたのは懐かしい声。
 でも、目の前にあるのは鏡と剣。
 しかも、なんか見覚えがありまくるんですけど?
『ってもしかして清と氷火理さんーッ』
『ええー今更気づいたんですか環さんひどいー』
『うるさいっ とにかくこれどういうことよッ
 私もだけど二人とも死んだんじゃ?』
 そう。どういうわけか、こちらの世界に迷い込んできた人はみんな土に還ることなんて出来なくて、氷火理さんみたいに剣になったりいろんなものにされてきたんだけど。
『なんか死にぞこなったみたいですねー』
『意志のある道具なんて、ほんとに何かのゲーム?』
『あんまり考えない方が良いぞ、環。諦めが肝心だ』
 そう切り替えられる氷火理さんが本気で羨ましい。
 鏡の……清に映し出されてる勾玉と管玉の首飾りが私なんだろう。
『これからもよろしくお願いしますね環さん』
 なんせ僕たち三種の神器らしいですから。
 そう笑う清に、私はしょうがないなあと笑って返した。

 おしまい

この話でなんとなく背景が分かっていただけるかなーっと。
まだまだ固まっていないので、書くに書けない状況です。当分こんなのが続きます。