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もはや熟年夫婦カップル

 さて、あてのない旅を続けてどのくらい経っただろうか。
 それなりに目立つだろう容姿を持つ相手だが、なかなか足取りは掴めなかった。
 逃げ回る理由は分からなくはない。
 だから、それでも納得しようと試みてきたが――こうも続くとが面白いはずも無い。
「眉間、皺よってるわよ」
 前を歩くディアナの言葉にラシェはますます面白くなさそうに顰める。
 もうすぐ街に入るのに、そんな顔をしていては怖がられるとまで言われれば、先ほどまでの感情もあいまって益々面白くない。
 見てもいないくせに何故分かるのかとは口に出さなかった。
 伊達に短い付き合いじゃない。
 口でなんと言い募ろうと、見破られるものは見破られるのだ。
 こちらが反論しないことがおかしいのか、小さな笑い声まで聞こえる。
 いや。『反論しないことが』ではなく、大方拗ねているとでも思っているのだろう。
 そして実際、大きく外れてはいない。それがさらに面白くない。
 なんとも嫌なループだ。
 まったく。
 昔はこちらが黙っているだけでも、おどおどと様子を伺ってきていたというのに。
 反応を示さなかったせいだろうか、それとも別の何かの理由だろうか。歩みを緩めたディアナが振り返る。
 困ったように、けれどどこか窘めるような笑みを浮かべて。
 大方、機嫌を直せとかそういったところだろう。だがそもそも、元々良くなかったものを悪化させた原因は誰だと思っているのか。
 もちろんディアナも自覚はあるだろう。この程度のいさかいとも呼べないものは何度も繰り返している。故に落し所も十分知っている。
 だが、あえて今回はそのパターンに嵌めてやらない。
 元々歩幅はかなり違うから追い越すことは簡単。
 追い越し様に、ただ、笑う。
 視線が重なる瞬間を狙って仕掛けたそれは、予想通りの効果を与えた。
 ここ最近見なくなった焦りの色。それさえ確認できれば良い。
 きっとすぐには反応できないだろう。
 漏れた笑みに正気に戻ったのか、少し尖った気配がする。
 もう二歩も歩けば、ほら、怒ったような足音がついてくる。
 今度はこちらが宥める番か。それとも誤魔化してしまおうか。
 隣までやってきた足音。再び交わる視線。楽しげに、少し不満そうに、二人は笑う。
 遠く見えていた街の入り口はもうすぐ。

「7つのカップル」お題提供元:[fisika]http://mblg.tv/fisika/