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終の朝 夕べの兆し

信じてくれるなら

 自分はとても人間不信なのだろうとクレメンティアは思う。
 小さいころの環境から来ていることは分かるが、いつまで引きずり続けてしまうのか、少々怖いとも感じている。
 特に、大人はクレメンティアの言葉をさらりとかわしてしまうことが多くて、だからこそ口数が少なくなっていった。
 公爵家に引き取られたことで、それでもだいぶ改善はできているのだけど。
「そこに何かあるの?」
 何も見えないのに。
 訴えは何度も無視された。
 みんなには見えるものが自分には見えないのだと気付いたのはいつだったろう?
 それから、口にすることは止めたのだけど。
「もしかして、クレアには見えていないのかな?」
 養父の言葉に背筋が凍った。
 みんなと違うことに、小さな子供はとても敏感で、だからこそ孤児院ではいじめられた。
 どう答えたのかは忘れてしまったけれど、答えを聞いた養父が頭をやさしくなでてくれたことは覚えている。
「クレアはとても珍しい目を持ってるんだね。見えないことが辛いかもしれないけれど……君は、魔法に惑わされることがない」
 悪いことばかりではないのだと言われて、抱きしめられてようやくほっとした。
 それからは、見えないと訴えれば兄姉は分かりやすいように教えてくれたし、不便もなかった。
 クレアを魔法でだますことはできないから、と頼りにされたりもした。
 けれど、家族以外にこのことを話すつもりはなかった。どうしても小さなころを思い出してしまうから。
 だけど……どうしようもない状況だったとはいえ、『彼』は『秘密』を話してくれた。だから、わたしも……話したい。
 そして、信じてくれたなら、応えよう。わたしができること、すべてを持って。

形を知って、守る術を探す。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/