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意味と価値の解釈

 鏡に映った自分を見て、おもわずため息が漏れた。
 いけないいけないと思いつつも、このもやもやが息と一緒に出ていけば良いのにと思ってしまう。
 先ほどから鏡を見るたびに目に入ってしまうもの。
 首元を彩るペンダント。アポロニウスからの誕生日プレゼント。
 自分の周囲でいろんな思惑から、彼を巻き込もうという連中が多いことは知っている。
 だから穿ちすぎだろう、とは思うのだ。考えすぎているのだと。
 彼が言ったように、世話になった相手だから多少奮発したくらいのものだろう。
 ぱっと見は高校生のお小遣いで買えそうなくらいの可愛らしいアクセサリー。
 ただ使ってあるのが魔封石のため、実際の値段は高め。それでも、辞退するほどの高級品という訳でもない。
 つまり、世話になった相手に渡すのにはちょうどいいくらいの品ではあるのだ。
 問題はモチーフにある。
 四つ葉のクローバー。
 アポロニウスが言っていたように『幸運』のイメージが強く、モチーフとしてよく使われてはいるのだけれど……花言葉を考えると意味深すぎる。
 あの時の表情を見る限りでは、知っていたとは思えない。
 それでも、こちらの動揺は伝わってしまっていただろうけれど。
 指摘すればよかったのだろうか? いや……いつものようにからかうことなどできずに、妙な空気が流れるに違いない。
 だから、黙っていて正解だとは思うのだけれど。
 また大きなため息ひとつ。
 うん、気にするのはやめよう。
 今までにもこういうややこしい事態はあったじゃない。特にあの、アレなおうじサマ関連で。
 単純でいい。プレゼントしてくれたことは嬉しかったから、彼の誕生日にも何か贈ろう。
 それで、いいわよね。

気になりつつも気にしない。気にしてなんかないったら。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/