うちへおいで
『あたしは、レンと向き合いたい』
真っ直ぐな目は見慣れたもので――そうよ知ってる。彼を探しているときにもこんな目をしていたもの。
『レン』
『レン』
『レンちゃん』
耳に残る懐かしい声。エステル、ヨシュア、ティータ。
『お茶会』は楽しかった。あんな空間でも――会えたのは嬉しかった。
あの時はわからなくて逃げて、偶然再会したあのときだって逃げて。
逃げて、逃げて逃げて――それを選んだのはレンなのに、どうして足を止めてしまうの?
早くいかなきゃ捕まっちゃう。捕まったらきっと逃げられないわ。
そう、こわいこわいオニさんだから。弱いくせに全然あきらめない。
だから――逃げなきゃいけないの。
髪の色が似ているとか、背格好が似ているとか、声が似ているとか。
そんなのを気にかけて足を止めちゃいけないのに。
捕まらないわ。
――もう追いかけてはくれないの?
いつまでだって逃げるから。
――だから追いかけて。
『絶対つかまえてやるんだから』
閉じた瞳に見えるのは、微笑みながら手を伸ばす彼女。
「――もうっ」
ままならない自分の心に嫌気がさして悪態をつく。
エステルのせいなんだから。
だから、もう。
「あきらめてよ、エステル」
お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/
かくれんぼ、それとも追いかけっこ?