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そういうこと

 香りを楽しんで一口含む。相変わらず紅茶はおいしい。
 喉の渇きを潤しながら、コスモスはいつ口を開こうか迷っていた。
 場所はPAのシオンたちの部屋。
 主な部屋の主たる弟たちは学校の時間でいない。
 ここに来るときは、大抵薄はお役御免とばかりにどこかに遊びに行くことが多い。あんまり休みをあげられない分、羽を伸ばしてほしいとは思うし、正直いてほしくはないのでありがたい。
 肝心の相手はというと、お茶の準備をした後はコスモスと同じソファに座ってテレビを眺めている。
 どうしたものかと考えて、カップを置いて相手の様子をそっと窺う。
 すぐ隣ではなく、一人分空いた隙間。
 前はここまで開くことはなかったのに、なんて思って。
「ねえアポロニウス」
「ん?」
 するりと出た呼びかけに、彼は紅茶のカップを下して振り向く。
 口に出したからにはもう引き下がれない。
 何かを感じたのか、アポロニウスが少し下がったような気がした。
 また無茶を言い出すとでも思われたのだろうか?
 ……無茶と言えば、無茶かもしれないけれど。
「付き合ってくれる?」
 ちょっとそこまでお使いに、程度のノリで言ってみれば、彼はぱちくりと瞬いて、期待半分不安半分と言った様子で口を開いた。
「いつまで?」
 どこと聞かずにいつと返してくる彼にどう答えたものやら。
 けれど、馴染んだ動作で微笑み返し、いたずらめかして問うてみる。
「終わりまで?」
「それは……願ってもないな」
 恐る恐る伸びてきた手は、こわごわといった様子でコスモスの背に回される。
 あいさつのハグでももうちょっと力を込めるだろうというくらい弱弱しい。
「まだ怖い?」
「……怖くない」
「すっごい震えてるわよ」
 くすくすと笑いを殺しながら指摘すれば、ムキになったのか強く抱きしめられた。
 さらさらと顔にかかる髪がくすぐったい
「何回、言おうと思ったか知らないだろうな」
 どこか拗ねたような物言いに、はてと首をかしげる。
「なんのこと?」
「プロポーズするなら自分からって言ってただろう?」
 そう返されて、記憶を反芻する。
「そんなこと覚えてて、律儀に守ってたの?」
 問いかけに、また腕の力が強くなる。
 図星だと感じるのに十分な反応で、ますます笑いがこみあげてくる。
 妙に意味深な贈り物とかしてるなと思ってはいたけど、言えない代わりにだとしたら。
 これ以上何か言ったらますます拗ねそうだから、ただ黙って体を預ける。
 びくりと怯えるように動いたことには目をつぶってあげるとしよう。

結末は多分予想されていた。時期とか、そういったもの以外は。
転がりついた先がこんな感じでした。真剣に受けとけてっていうのには縁がないふたりです。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/