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空の在り処

夢を見せてあげる

 思えばなぜか昔から『良い子』と思われてきた。
 自らの所業と思えば、到底そうとは思えないのに、周りの評価は『良い子』だった。
 お転婆すぎて困るとは末の妹への乳母たちの評価だが、自身も小さいころはお転婆だった。
 貴族とはいえ中の下の家だったために、今のように部屋に押し込められることなどなく、庭ならば自由に歩き回ることができた。
 探検と称して走り回る弟たちを捕まえるために走り回ったのは数えきれないくらいある。
 それでも、『おとなしい子』『良い子』という評価が変わらないのは、宮中に来てからはおとなしくしているからだろう。
 雲の上の存在と思っていた相手が身内で、将来自分がその座に就くのだと言われても実感はなかった。

 幸せに見えるように、穏やかに。笑顔は絶やさない。
 そうやって過ごしてきた。
 禍根や不穏な空気が漂い続けているときは、なおさら。

 慈悲深い昴を戴く穏やかな国。
 飢えることなく凍えることない、平穏が長く続くように。
 ――ほんの少しのまほろばとしても。

琴お姉さんの昔々。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/