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古い約束

 もうすっかり慣れてしまったあの町への道。
 いつの間にか長年に渡る慣習になってしまったけれど、約束を果たすために今回も私はそこへと向かう。
 湖のほとりにあるその町は以前に来た時よりも人が多くなっていて、賑わっている事が見て取れた。

――頼む……よければ見守ってやってくれ――

 耳に甦るのはあの日のこと。
 ラシェと約束を交わした日のこと。
 その証はあの日からいつも私のそばにある。
 道を歩く。その動作にあわせてゆれる、腰に佩いた一振りの剣。
 私が剣を持っていても、まともに扱う事は出来ないのは分かっているのに。

――無茶な頼みの御礼がわりだ――

 それでも彼はこれを『譲った』。
 あんなに剣を大切にしていたのに。

――だからさ。よろしく頼むぜ――

 だから、約束は必ず守ろう。
 そう決めた。

 彼――私の護衛対象――はとても元気そうで……気づかれたかと一瞬思ったけれど。
 それでも気を抜く訳にはいかない。
 しばらく見ないうちに彼は大分大きくなったなと思う。
 思春期を迎えて、これからもっと背が伸びていくことも……知ってる。
 武器屋に入っていった彼が剣を抱えて出てきた。
 今日もまた配達に行くのだろう。体格にはあわない大きな剣を抱えている。
 不満そうな顔が満面の笑みに変わったかと思うと、道行く冒険者に憧れの眼差し。
 年相応の反応かもしれないけど、剣が好きなことは変わっていないみたい。
 そんな風に思っていると、視線の先で彼が何かに気づいたように後ろを振り向いた。
 相変わらず聡い。
 納得いかなそうな顔で視線を戻しかけて……あ、目が合った。
 歩き去っていく彼の背中を見守っていると、それは来た。
 先程の彼の行動の元になったもの。
 襲い掛かろうとする妖魔を雷で塵に帰し、先を思って嘆息する。
 私の封印が不完全だったせいで、こんな風に妖魔を引き寄せてしまう。
 彼との約束でもあるし、これは明らかに私の失態。
 だから……約束は必ず守る。

 でも結局私は約束を守ることが出来たのかしら?
 今は二人、あの町を見下ろしている。
 『預かっていた』剣は本来の持ち主の元へ。
「しかし本っ当に見守ってるとは思わなかったぞ」
 借りが出来たなという彼に、私は笑顔で応じる。
 大事なものを託されて、それで約束を守れないはずがないのに。
「これからどうするつもり?」
「そりゃーもちろん。十五年間の夢を実現させないとな……」
 そうして二人で歩き出す。
 また三人で旅をするために。

このお題を借りてきた理由ってこれがあったからだったりします。
丁度そのときも発作中だったもので、真っ先に思いついたのがこれ。今度はディアナ視点で。
次は「赤」時代でセキを書くことが目標ですが……ですが、キャラを本気で掴めてないので……精進します。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/