再会の日
『さよなら』だと少し寂しいから。
確か三回ほど『のんびり』に付き合った後だったと思う。
最初はともかく、後は少しの時間……長くても三十分ほどボーっとしたら帰ってたんだけど。
その日も学校からの帰り道にちょっと寄って、しばらくボーっとしてた。
こんにちはの挨拶以外は本当に会話なんてなくて。
……でも、不思議と沈黙は心地よかった。
さてそろそろ帰ろうかなと腰を上げたときに彼が言った。
「またね」
たった一言告げて、にっこり笑う。
ゆるくウェイブのかかった金髪は春の日差しを受けたタンポポみたいに柔らかで。
どう見ても年上なのに、こういうしぐさは小さい子みたい。
あたしが何も言わずにいると、不思議そうに……それでいて少し不安そうに見つめてくる。
あたしは立ち上がってて、この人は座っているから、自然と上目遣い……ってそんな子犬のような目で見ないで欲しいな。
ちょっと苦笑いになっちゃったかもしれないけど、あたしは一応返事を返した。
欲しがってるだろう返事は多分コレであってる。
でも……だからこそなんとなく分かった。
そして、その予感はやっぱり当たってた。
分かっていはいたけど……見慣れた風景にちょっと足りないものがあるっていうのは、結構寂しくて。それでもだんだん季節は移って、花から若葉へ、そして今は色づいた葉が落ちてきてる。
今日もまた、付き合いが悪いと文香に言われつつも逃げてしまった。
確かにおいしいケーキには心惹かれたんだけど、後が怖いしお財布も寂しいし。
あーあとつぶやきながら顔を上げると、ちょうどあの土手だった。
ちょうど半年くらい前は暖かくてお昼寝に最高だったけど、今同じことをしたら少し寒いな。
笑うつもりだったのに、やっぱりどこか力がでない。
物思いにふけっちゃうのはやっぱり秋だからなのかしら。
あの時と同じように土手に下りてみる。
でも、足元を確認しなかったのがいけなかった。
あたしの右足は思いっきり落ち葉の山を踏んづけてた。
物憂げな気分はどこへやら。
「どこのどいつよっ こんなとこに落ち葉集めるなんてっ」
結構はまったから靴も靴下も汚れちゃった……落ちるかなぁこれ?
肩を落としたあたしに、困ったような嬉しそうな声がかかった。
「すみませんレディ。おみ足をもう少し左によけてくださいませんか?」
振り返れば、楽しそうに笑っている彼が。
おまけ
「でもなんでこんなところにこんなに落ち葉集めてるんですか」
「寒いしお芋買ってきたから焼こうと思って」
「……ちょっとそれはどうかと思いますよ」
お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/
エディと硝子さんのほのぼの話はコレにて一応完結。
タイトルは双子連作のはずなのに、エリィの出番がないない。
ほのぼのらぶは難しいなと改めて実感。どうしてもオチをつけたくなる。