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空の在り処

明日雨が降ったら

 ふわっと強い風が吹いた。
 せっかく掃いた落ち葉がまた派手に撒き散らされたのはちょっと悲しいけど、ちっとも気にならなかった。
 鼻先をくすぐる、懐かしい感覚。
「あめ、かな?」
 わくわくしながら見上げた空は、少しずつその暗さを増していってる。
 うん。きっと雨。
 今年はまだ雨がすくないから、きっと皆喜ぶだろうな。
 じいさまは早く帰ってきなさいって言っていたけど、久しぶりの雨だから。
 お掃除の片付けをして、そのときをわくわくと待つ。
 ぽつんと一粒頬に落ちた。
 遠い雷鳴。だんだん近づいてくる。
 雷は神鳴。
 神が降られるその前に、清めの雨は降りたもう。

 しとしと。しとしと。
 ぽちゃ。ぴちゃん。
 人がたくさんいる場所なのに、ここは自然の音がすごく聞こえる。
 雨の降る音。屋根から雫のたれる音。
 あの高い音は猪脅し。雨水が、石を穿つ音。
 雨の日は音が良く聞こえるような気がするのは、気のせいかな?
 じめじめしてるのは嫌だけど、雨は好き。
 日に日に変わっていくアジサイの色も、少しかすんだ景色も。
 でも、私……どれだけ雨に触れてないんだろう?
「まあ姫様! そのようなところにいては濡れてしまいます」
 ああ見つかっちゃった。
 何度か勝手に部屋を抜け出したから、今はもうそれも出来ないくらい厳重に目が光ってる。人がいないように見えても、気配はたくさん。
 あわてたようにまた部屋の中央に戻される。
 ここにいれば雨には絶対濡れないし、湿った空気も遠い。
 雨にうたれて空を見上げるのは好きなのに。
 まるで祝福されているようで、何よりのお清めなのに。
 一人じゃないけど、ひとり。
 ぽつんと、雨の外を眺めていた。

 水の冷たさが心地良くて、いつまでもまどろんでいたくなったけれど。
「まったく。お前は本当に雨が好きじゃのぅ」
 じいさまがかなり呆れた様子で私の額に手を載せる。
 少し体温の低いじいさまの手が気持ちよくて、自然と微笑んだ。
「えへへー」
「お前に風邪をひかせたと知られたら、わしはなんと言われるか分からんのだが。
 こう嬉しそうにされると文句も言えんのぅ」
 早く寝なさいと言って、じいさまはそっと部屋から出て行った。
 風邪を引いたら迷惑かけるのは分かってる。
 でも、滝に打たれた時は風邪引かないのですけど。
 なんでだろうと、熱で回らない頭で考える。
 どっちも水に打たれているのに。
 少し大人しくなった雨音が耳に心地よい。
 薬が効いてきたのか、だんだん眠気がやってきた。
 前は雨が遠かった。
 さっき見た夢はちょっと昔の話。
 雨もだけれど、雪も部屋の奥から眺めるだけ。
 やけるからと太陽の光もあまり浴びれなかった。
 今はまた、それをこんなに近くに感じられる。
 でも、今回はちょっと強く降りすぎかな?
 あんまりいっぱい強い雨だと、今度は災害になってしまう。
 明日も、今日みたいに強い雨なら。
 てるてるぼうずをつくろうかな。

じいさまと二人旅中の幻日こと現。規制だらけの場所から出て、初めて知ることも多い。
しとしとした雨音は落ち着きますよね。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/