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ナビガトリア

見えない壁

「うー。えーっと」
 うなりながらも手を……もとい、指をぴこぴこ動かすあたし。
 こうもボタンが小さいと扱いづらい。
「あーもうめんどいッ」
「そんな扱いしてると、すぐに壊れますよ公女」
「ぐ……」
 薄の突っ込みにうめきつつも、ソレをパタンととじてテーブルに置く。
「大体、携帯電話なんて通話とメールだけできればいいのよ」
 いらない機能ばっかりついてさ。
 全部使いこなせてる人なんで、全体の何パーセントやら?
「これで話ができるのか」
 興味津々で携帯を見るのはアポロニウス。
 確かに彼からすれば、こんなちっさい箱で離れた相手と話ができるのは驚きだろう。
「不思議だな」
「不思議っていうか……魔法使い以外の人間から見たマジックアイテムもそんなのが多いと思うわよ」
 確か、離れたところにいる相手と話ができる道具はあったと思うし。
 しかも、携帯電話以上につくりがわからない、ただの水晶球だったと思う。
「使ってみる?」
 ついと差し出せば、慌ててぶんぶか首を振る。
 ……写真を撮られたら「魂抜かれる」とかって教えたら、信じるんじゃないだろうか?
「というか公女。それ、設定途中なんでしょう?」
「使わない機能は使わないからいいの」
 きっぱりはっきり言い切る。
 本当にさ。もっと機能がシンプルなのがあっていいと思うのよ、あたしは。
「あーっ」
 突然の声に振り向けば、目をきらきらさせた楸ちゃん。
 あ。なんかやな予感。
「こーちゃんのケータイ! あたしが欲しかった機種だーッ」
「そーなんだ?」
 店で適当に選んだやつなんだけどな。
「ならなんでソレにしなかったの? 先週変えたばっかりよね」
「在庫なかったんだもん」
 遅れてやってきた梅桃ちゃんの問いに、楸ちゃんはふくれっ面で返す。
「ね、ね。こーちゃん。ソレいじらせて? さわらせてっ」
「どーぞ」
 どうせ特に使わないしと手渡せば、歓声を上げて楸ちゃんは受け取った。
「サイトも見れるし、これでお金払えたりもするんだよねっ」
「あ。もしかしてテレビも見れる?」
「そうそう! わーいアプリがいっぱいっ」
 嬉々としてケータイをいじるふたりを見て思う。
 こっちのあっちのこの温度差。
 つまりこれが、あたしの千里眼をもってしても見えない壁ってことだ。

PAメンツもちょっぴり登場とのことでリクエストいただいてました。
痛いほどに感じつつも見えない壁といえば、ジェネレーションギャップかと。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/