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中身は何

「さ、やるぞ」
 意を決してマスターはほうきを手に取りました。
 目的地は目の前。閉ざされた扉の向こう。
 嫌そうにため息つくマスターと同じく、はたきを持ったアポロニウスさんも、掃除機を持った梅桃さんも肩を落としてます。
「今度はどうなってるかなー?」
「ちょっと期間開いたから……多分ひどいことに?」
 乾いた笑いのマスターに、梅桃さんも賛同します。
 確かに、ボクもこの扉は開きたくないっすね。
 準備万端のままに動かないマスターたちに、痺れを切らしたのはアポロニウスさん。
「早くしたほうが良いんじゃないのか? カクタスも限界が来るだろ?」
「本気で逃げに走ったカクタスを捕まえるのって結構大変だから」
「恥も外聞もなく逃げ出すからな」
「時間がかかるなら、早く始めれば良いんじゃないのか」
 正論を言われればもうどうしようもないです。
 仕方なく、代表してマスターが扉を開けます。
 ゆっくりゆっくりとノブを回して引くと、少しずつ見える中の様子。
 紙ごみやお菓子の食べかす、何かを拭いたのか一部だけ色の違うタオル。その他色々。
「掃除しろっていってるのに……ッ」
「あっという間に汚すんだから」
 肩を震わせるマスターと、肩を落とす梅桃さん。気持ちは良く分かります。
 結局は、アポロニウスさんに宥められて、すぐに掃除をはじめたんすけど……

 そもそものことの起こりは、机にかばんのものを全部取り出したときのこと。
 オレンジのリボンでラッピングされた、小袋入りのマーマレード。
 それを指差し。
「あ、そこにあったんだ、オレンジの砂糖漬け」
 持ち主さんこと部屋の主さんが言ったせいなんですけどね。

楸は片付けられない子です。PA書いたの久々な気がします。

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/