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そう来ると思った

 とん。
 小さな音を立てて、小さな影が着地する。
 それは辺りをきょろきょろと伺い、誰もいないと思ったのか満足そうに笑みを浮かべて立てかけていた道具を手に取ろうとした。
 その瞬間を見計らって声をかける。
「何してるの? エステル」
 僕の呼びかけに彼女はびくっと体をすくませて、ややあってぎこちなくこちらを向く。
 父さんと同じ色の瞳が僕の姿を認めて、明らかにしまったという顔で僕の名前を呼ぶ。
「よ……ヨシュア」
「どこに行くの?」
 今日は日曜学校の日だよねと言外に含ませて言えば、ごまかすためか明るく笑う。
「エステル?」
 にっこりわらってゆっくり言えば、流石に僕が怒っている事が分かったのか、ごまかし笑いを止めて伺うように言う。
「えーっとね、天気がいいから勉強なんてもったいないじゃない」
「今日は日曜学校の日だよね」
 言うまでもない事を繰り返すと彼女はうっと詰まる。
 今日でもう何回目だろう。
 ため息つきたくなるのをこらえて言う。
「ほら早く行くよ」
「ちょっとヨシュア!」
「ああ、釣竿はちゃんと片付けてからね」
「ヨシュアったらっ こんないい天気なのにどうして勉強できるのよっ」
 当然のことを言う僕に反論するエステル。
 ……この考え方が分からない。
「エステル。遊撃士になりたいんだったらちゃんと勉強しなきゃ駄目だよ」
 彼女がそのために棒術を頑張っていることも、遊撃士である父さんを誇りに思っていることも知ってる。
 エステルは本気で遊撃士になりたがってる。
 なら勉強だって頑張ったっていいはずなのに。
「あーもうヨシュアまで父さんみたいなこと言って!
 弟なんだからあたしの言う事聞きなさいよ!」
 そう言っていつもさぼろうとする。
 だいたい弟って言ったって……それはエステルが言ってる事で面倒を見てるのは僕のほうだ。不機嫌は隠して問い掛けてみる。答えなんてわかっているけど。
「言う事って?」
「もちろん釣りに」
「駄目」
「なんでよっ」
「だから今日は日曜学校だって。
 いい加減にしないと、また山のように宿題出されるよ?」
「ううう~」
 それを想像したのか嫌そうに唸るエステル。
 常習犯のエステルはいつも山のように宿題を出されてる。
 確かに外で遊んでるエステルの方が彼女らしいけど。 いつもならなんだかんだ言ってもどうにかここから動くのに、今日は何故か動こうとしない。
「そんなに釣りに行きたいの?」
「だって」
 何かをいいかけて止めるエステル。
 確かにエステルは釣りが好きだけど……そこでようやく思い出した。
 数日前クラウス市長に立派な魚拓をみせてもらった事を。
「そんなに悔しかったの?」
「そっ そんなわけないじゃないっ」
 思わず聞けばかっとなって返す彼女。
 ああやっぱり図星だったんだ。
 本当にエステルは嘘がつけない。そしてそれはすごく……うらやましい。
「羨ましくなんて無いわよっ
 ぜったいぜーったいクラウスおじさんより大物釣り上げてやるんだから!」
「わかった。僕も手伝うよ」
「え?」
 急に同意を示した僕に不思議そうにするエステル。
「だって大物を釣るんでしょ?
 なら人ではいたほうが良いよね」
「ヨシュア!」
 僕の言葉に笑顔で抱きついてくるエステル。
 嬉しいけど……困る。
「さすがヨシュア! じゃあ早速」
「遅刻しちゃうし、日曜学校に行こうか」
「え?」
 そう言えば、彼女はばっと離れて途端に不機嫌になる。
「なんで! 今手伝うって言ったじゃない!」
「今日とは言ってないよ。ちゃんと日曜学校に行ったら明日付き合うよ」
 悪びれもなく言えば、エステルはあっけに取られた顔をして僕をみる。
「ほら、早く行かないと遅刻するよエステル」
「あーもうヨシュア~っ!!」

日曜学校に通ってる頃の二人をヨシュア視点で。ヨシュアっぽく書けてるかな?
SC発売直前という事もあり、軌跡熱も上がってます!

お題提供元:[もの書きさんに80フレーズ] http://platinum.my-sv.net/